次に、ズッピ枢機卿は先月28日から3日間の日程でモスクワを訪問した。そして29日、ロシア正教会最高指導者モスクワ総主教キリル1世と会見した。モスクワ総主教庁での会談には、バチカン教皇庁のジョバンニ・ダニエッロ公使とキリル1世の広報担当(外相相当)のヴォロコラムスク首都圏アントニー府主教も参加した。
ロシアのメディアによると、キリル1世はズッピ枢機卿の訪問に「満足」したという。「教皇があなたをモスクワに派遣してくださったことに感謝する」と語った。地元メディアによると、ボローニャ大司教でもあるズッピ枢機卿はキリル1世をボローニャ訪問に招待したという。
キリル1世にとって、戦争が始まって以来、ローマ教皇の直接の代表者との会談は初めて。アントニー府主教は5月初め、ローマで教皇の一般謁見に参加し、教皇と数言の言葉を交わしている。
キリル1世はウクライナ戦争勃発後、プーチン大統領のウクライナ戦争を「形而上学的な闘争」と位置づけ、ロシア側を「善」として退廃文化の欧米側を「悪」とし、「善の悪への戦い」と解説するなど、同1世は2009年にモスクワ総主教に就任して以来、一貫してプーチン氏を支持してきた。
キリル1世はウクライナとロシアが教会法に基づいて連携していると主張し、キーウは“エルサレム”だという。「ロシア正教会はそこから誕生したのだから、その歴史的、精神的繋がりを捨て去ることはできない」と主張し、ロシアの敵対者を「悪の勢力」と呼び、ロシア兵士に闘うように呼び掛けてきた経緯がある(「キリル1世の『ルースキー・ミール』」2022年4月25日参考)。
教皇特使はまた、プーチン大統領の外交政策顧問の1人、元駐米モスクワ大使のユーリ・ウシャコフ氏とも会談した。バチカン関係者によると、テーマは人道的取り組みについてだったと発表。一方、クレムリン側は29日、「会議では具体的な合意はなかった」と指摘した。
なお、プーチン大統領のドミトリー・ペスコフ報道官は、「危機の平和的解決に向けたバチカンの努力と取り組みに非常に感謝している。ウクライナでの武力紛争の終結を支援する教皇の意欲を歓迎する」と強調した
同枢機卿は29日夕方、モスクワのカトリック大聖堂で礼拝を行い、ロシアの信者たちを前に「フランシスコ教皇の挨拶と祈り」を伝えた。ズッピ枢機卿は説教の中で、「フランシスコ教皇は早く平和が訪れるようあらゆる努力をしている」と語った。ズッピ枢機卿は30日午後(現地時間)にローマに戻る予定だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年7月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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