前線からの守備は不発に

湘南は横浜FMにハイプレスを仕掛けようとしたものの、ホームチームの巧みな攻撃配置に苦しめられた。

基本布陣[4-2-1-3]の横浜FMの2センターバック、エドゥアルドと上島拓巳(両DF)が自陣後方からのパス回しの際にペナルティエリア横幅いっぱいに広がったことで、湘南の2トップ(FW大橋祐紀と町野)によるハイプレスの直撃を防止。大橋と町野は横浜FMの2ボランチ(渡辺皓太と藤田譲瑠チマの両MF)へのパスコースを塞いでいたが、相手の2センターバックとの距離が長く、彼らに鋭く寄せるには至らなかった。

この状況を受け、湘南のMF平岡大陽が最前線に上がり横浜FMの2センターバックから2ボランチへのパスコースを塞ごうとしたが、今度はDF松原(右サイドバック)を誰が捕捉するのかが曖昧に。左ウイングバックの中野と、インサイドハーフの平岡のどちらかが松原にプレスをかけるべきだったが、この不徹底が試合序盤に災いした。

横浜FMの先制ゴールは、自陣右サイドでボールを捌こうとした松原への、平岡や中野の寄せが緩かったことで生まれたもの。敵陣でのボール奪取やショートカウンターを狙うには、湘南の守備は緻密さに欠けていた。

横浜FMのDF松原が内側に立ち、パスコースを確保

巧みだった松原のポジショニング

この試合で先制ゴールを挙げた横浜FMの右サイドバック松原は、巧みなポジショニングで自軍のパスワークを手助け。味方GK一森や最終ラインからのパス回しの際に、松原がタッチライン際から内側にポジションを移すことで、自身がサイドと中央どちらにもパスを出せる状況を何度も作り出していた。

湘南は6月28日の浦和レッズ戦(J1第12節)でも、タッチライン際から内側に絞った右サイドバック酒井宏樹への守備が曖昧になり、苦戦を強いられている。浦和戦からの守備の改善や進歩は見られなかった。


MF藤田譲瑠チマ(左)MF小野瀬康介(右) 写真:Getty Images

相変わらず不安定な湘南のパスワーク

両ウイングバックが自陣後方のタッチライン際や味方センターバックとほぼ同列の位置でパスを受けてしまい、相手のハイプレスの餌食となる湘南の悪癖は相変わらず。第11節の柏レイソル戦あたりから散見されるこの現象が、横浜FM戦でも失点に繋がってしまった。

湘南の2失点目は、左ウイングバックの中野が自陣後方の大外のレーンでパスを受け、相手DF松原のプレスを浴びたことで喫したもの。縦へのパスコースを塞がれた中野は、やむなくGKソンへのバックパスを選ぶ。この時点で相手にパスコースを限定されていたGKソンはDF杉岡大暉へボールを渡そうとしたが、これをマテウスに奪われてしまった。

この場面では湘南の2インサイドハーフ(MF小野瀬康介と平岡)によるGKソンや3センターバックへのサポートも遅れており、自陣後方から安全にパスを繋ぐための配置が整っていたとは言い難い。中盤の底の選手と2インサイドハーフの計3人が相手の最前線の斜め後ろに立ち、パスコースを作る。これは浦和戦でも物足りなかった動きや配置だが、湘南の山口智監督は攻撃面でも修正を施せなかった。浦和戦から中3日で迎えた試合とはいえ、せめて攻撃面と守備面どちらか一方でも改善の跡を見せてほしかった。

ここまで選手たちやコーチングスタッフの修正力が乏しいと、上位進出どころかJ1リーグ残留もおぼつかない。先が思いやられる試合内容だった。