なぜ、このような行動が生まれたのでしょうか?

現実の世界で実現できないけれどもう一人の自分にはそれを託せるのではないかと考えています。例えば社会に対して不満がある、なぜ、自分だけこんなに苦労しても楽になれないし、楽しくないのだろうと考えます。どうして彼女や彼氏ができないのか、会社の会議では自分の意見はなかなか言えないし、いろいろな作業を押し付けられるし、自分の行きたかったお店に行けば長蛇の列で暑いのに並びたくない、といった思い通りにならない日々の中、もう一人の自分ならそれが成し遂げられるのでしょう。

かつてのアニメヒーロー、ヒロインよりもっと現実に即した感じがあるように思うのです。

以前、若い人が会社に入っても偉く成りたがらないという話題を振りました。その背景は「責任をとりたくない」です。自分の上司が問題解決のために東奔西走し、汗をかきながら頭を下げているシーンを見て自分はああなりたくない、と強く思います。ならば一生ヒラでいいか、なのです。お金は欲しいけれどそこまでして欲しくはない、なのです。

これは北米の若い人の典型的パターンとも共通します。こちらの会社は人遣いは荒いし、最初のオリエンテーションはともかく、あとは自分で学んで、というスタイルだと途中で失敗もするし、嫌になってすぐに退職するケースは後を絶ちません。「自分の思っていた会社と違っていました」は北米のみならず、日本でも常に上位に入る退職理由です。

私がもう一つ着目するのはもう一人の自分を持つことでより自分だけの世界に没入しやすくなることでしょうか?自分のことを分かってくれるのはリアルの世界でも2-3人、あとバーチャルの自分だけ、だけど自分は幸せ、なぜなら誰からも私の生き方にいちゃもんをつけられることは無いから、です。一歩間違えば現実逃避なのですが、自分と意見や生き方が違う人はそれぐらい「ウザい」のでしょう。

これを我々のような成熟した世代が自分たちと比較して、批判してはいけないと考えています。これは今の人たちの価値観そのものであり、そういう変化を作り出したのは我々にも大いに原因があるのです。これを嘆かず、社会が受け入れてながらも社会の構造をどう作り上げていくのか、考えなくてはいけません。

今回東京にいて思ったことはこの暑さの中、まだマスクをした若者が多いということ。マスクは感染症対策もあるのでしょうが、マスクをすることで自分を社会から隠蔽したい心理があるようにも見えます。つまり自分の存在を社会にアピールせず、ひっそり自分だけの世界に浸るのです。

私が少子化問題はお金だけの問題ではないと再三申し上げているのは若者の生き様が我々からすれば驚愕するほど変わってしまったことにあるのです。彼氏、彼女はバーチャルで。そのうち、バーチャル結婚にバーチャル家族ができるかもしれません。案外これは冗談ではなく、本当に起こりそうな気がします。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年6月30日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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