今、80〜90年代の絶版車がブーム!

今、絶版車が流行っている。今のバイクにはない個性的なスタイルやメカニズム、バイクらしさに満ちた存在感などに高い注目が集まっていると考えられる。実際に街中でもその年代のバイクが走っているのをよく見かけるが、独特のエキゾーストノートやフォルムは昭和生まれのライダーにとって懐かしくもあり、元気に走っている姿を見ると嬉しくも感じる。
またオーナーズクラブの活動も活発で、SNSなどを見ても多くのユーザーが同じ趣向を持つ仲間と絶版車を楽しんでいる様子がうかがえる。

2ストロークのバイクは、現代のバイクでは得ることができない独特のフィーリングが人気。

現代のバイクにはない絶版車のテイストは、今でも多くのユーザーを虜にしているのだ。

でも、その絶版車は本当に調子が良いの?

しかし街中を走っている絶版車を見ると気になることも。
信号待ちで常にアクセルを開け閉めしてエンジンがストールしないようにしていたり、加速のときにスムーズに吹け上がっていなかったりするバイクを見ることが少なからずあるからだ。
SNSでも不調を訴え解決策を求める書き込みなどが散見される。そんなときに見かける答えのひとつに「旧車だからそんなもんだよ」という言葉。それを聞いた質問者が「やっぱり…」と納得してしまうことも。
しかし80〜90年代のバイクをリアルタイムで見てきた立場から言うと、当時のバイクの完成度は高かった。冬場であってもチョークを引けばエンジンはセル(キック)ですぐにかかったし、アイドリングも短時間で安定。走行性能やハンドリングも現代のバイクとさほど変わらなかった。
しかし発売からすでに数十年が経過しているバイクは各部がくたびれてきている。そのため本来の性能を発揮できる個体が減ってきているというのが現状であろう。
また中古で買ったオーナーはそのバイクの本来のパフォーマンスを知らないので「不調に気付いていない」という事例もあるのかもしれない。

キャブレターのコンディションはエンジン性能を左右する

絶版車に多く使われているキャブレターとは、ガソリンと空気を混ぜてシリンダーに送り込む燃料供給装置のこと。現代のバイクはほぼ全てがコンピューター制御のインジェクションになっているが、2000年以前のバイクは原付きからリッターバイクまでほとんどがキャブレターを採用していた。

カワサキ・Z1のキャブレター

キャブレターは空気とガソリンが内部の細かい通路を通っていき混ざり合っていくという繊細かつ複雑なメカニズム。その通路はとても細かく、細かいゴミや汚れが混入するだけで調子を崩してしまうことも珍しくない。
絶版車で「始動性が悪い・アイドリングが不安定・スムーズに吹け上がらない」などの症状がある場合は、キャブレターが正常に働いていない可能性が高い。放置されていた期間が長いバイクであれば、その確率はさらに上る。
またずっと乗り続けられているバイクであっても、徐々に性能が低下していることが考えられる。キャブレターは普段乗っていても定期的なメンテナンスが必要とされる部品なので、時間が経つといつの間にかベストな状態から外れていってしまうのだ。

長期間放置されていた車両を整備して走らせようと考えた場合はさらに大変。
もし内部にガソリンが残ったまま放置されてしまっていたら、ガソリンが変質してこびりついたり、サビなどが発生して通路をふさいでしまうこともあるからだ。

内部のガソリンを抜かずに長期間放置されていたバイクのキャブレター
フロート室を開けると変質したガソリンがこびりついて通路をふさいでいる。これをキレイにするのはとても手間がかかる作業だ。
こちらは上のモノより少しマシだが、真鍮製のメインジェットサビてしまっている。こうなっていると見えない部分もサビにやられていると考えるのが妥当だろう。