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痛恨の結果となった、「ピニンファリーナ vs アローライン」
尻下がりだけがウィークポイントだったのだろうか?
痛恨の結果となった、「ピニンファリーナ vs アローライン」

かなり近代化されたとはいえ、初代310ブルーバードは1960年までイギリスのBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)と提携したうえで生産・販売したオースチン A50ケンブリッジの影響が濃い、突き出したヘッドライトで肩ひじ張ったイギリス風。
しかし2代目410ブルーバードはイタリアの名門カロッツェリア、ピニンファリーナへ依頼したエレガントなイタリア風デザインです。
フロントグリルと一体に並べられた4灯式ヘッドライト、ボンネットを挟みボリューム感のあるフェンダーから、テールへ続くショルダーラインまで豊かで躍動感のある曲線が続き、豊かな欧米への憧れは抱きつつも、単純な模倣からは脱しようとしていました。
当時の日本人が求めた、豪華さを印象付けるためのメッキパーツや、質感が高そうに見えた内装による「デラックス路線」にも合致しており、実際に発売当初は初代に引き続き、販売実績も良好だったのです。
しかし、1年遅れの1964年9月、ライバルのトヨペット コロナが3代目へとモデルチェンジ、バンパーを突き出したスラントノーズに、シャープな印象を与える直線的デザインの「アローライン」を採用、走行性能や快適性の水準も引き上げると、様相は一変します。
力強くたくましい印象を与えるコロナが、高度経済成長期ど真ん中の日本国民のハートをつかんだのに対し、エレガントではあるけども、ナヨっとした印象を与える410ブルーバードから、ユーザーは次第に離れていってしまったのです。
尻下がりだけがウィークポイントだったのだろうか?

その元凶として、当時から現在に至るまで「トランク部分の尻下がりテールラインが不評」とはよく言われますが、1966年4月に2度目のマイナーチェンジでテール形状を改めた後期型でも、コロナとの差はなかなか埋まりません。
90馬力のSUツインキャブエンジンを積み、後々までブルーバードの定番となるSSS(スーパースポーツセダン)グレードで初の「1600SSS」投入も、同種のグレードや、ブルーバードにない2ドアハードトップを追加したコロナに対し、有力な武器とは言えませんでした。
結局、次世代の3代目510型ブルーバードが「スーパーソニックライン」と呼ばれる直線的なデザインと、SSSがサファリラリーで活躍したことによって巻き返したことを考えると、410ブルーバードの全体的なデザインそのものが、日本人に合わなかったのでしょう。
ピニンファリーナによる元々のデザインが合わなければ、小手先の変更を繰り返してもバランスを崩すだけで、むしろデザインを改良するほど事態は悪化したのでは?と考えられます。
実際、今回の紹介で使っているトヨタ博物館所蔵の411型(410の1965年マイナーチェンジ版で、テールデザイン変更前)を見ても、斜め前方から見ても、横から見ても、「言うほど尻下がりだろうか?」と疑問を感じます。
同時期のいすゞ ベレット(1963年)の方がよほど尻下がりですが、同車がそのために不評だったという話も聞きませんし、当時としてはやや太すぎるように感じるA/Bピラーなど、新時代を感じさせるのに不十分なデザインだった、と考えた方がよさそうです。
もっとも、60年近く昔の話ですから、当時クルマ選びの立場にいた人に話を聞くのは今だとなかなか難しいですし、「当時は確かにそう思えたんだよ」と言われてしまえば、それだけの話ですが。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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