郵便受けに入れるのは「日本郵便」だけ。ということになるらしい。
ヤマト運輸が、メール便等の配達を日本郵便に移管する。
ヤマト、メール便配達を日本郵便に移管 ネコポスも
対象となるのは、同社メール便「クロネコDM便」と、フリマアプリで多用される「ネコポス」。配送を日本郵便に委託し、ヤマトは集荷業務のみを行う。
背景にあるのは、ドライバー不足(2024年問題)と、両社の取扱荷物の構成変化だ。
ここ5年間で、ヤマトの宅配便は、18億個から23億個へと「約3割」急増している。
キャパオーバーも目立つ。2019年には、外部配達員(クロネコメイト)に委託したクロネコDM便の未配達が22,956個、2021年には7,760個あったことが判明している。こうしたことを踏まえ、ヤマトは、2年前から一部地域のクロネコDM便の配達を、日本郵政に委託していた。今回の全量移管により、同社主力の2tトラックを活用した中核事業「宅急便」に専念できる。これがヤマトにとってのメリットだ。
一方、日本郵便は、余力を有効活用できることがメリットとなる。日本郵政の増田寛也社長は、会見で以下のように述べた。
「荷物の量が2020年をピークに減った」
2020年と比べ、郵便は164億通から144億通へ、メール便(ゆうメール)は36億個から31億個へと、どちらも「1割以上」減少している。日本郵便の持つ8万2000台の二輪と3万台の軽四輪が、有効活用できていない。これをクロネコDM便に活かし、「きめ細かく配ることが可能になる」という。
日本郵便の投函精度の高さや安定性を、ヤマトホールディングスの長尾裕社長は、以下のように評する。
「当社が一生懸命まねしても、なかなかたどり着けない領域」
はて。ヤマトはこんな“丸い会社”だっただろうか?
戦うクロネコいや違う。ヤマトは「戦う会社」だったはず。取引先、運輸省、そして郵政省。ケンカ相手を選ばない。正しいと思うことをする。それが、ヤマト運輸の元経営者であり、「宅急便」の生みの親でもある小倉昌男氏だった。
1979年、小倉氏は、主要取引先である三越の配送業務からの撤退を決める。三越新社長のヤマトに対する扱いが、あまりにも理不尽だったからだ。
配送料金が引き下げられる。三越流通センター内の駐車料金、事務所使用料が徴収される。遊休状態の三越配送センターとの賃貸借契約を強要される。新社長がプロデュースしたという「映画」の前売券を押し売りされる。
結果、ヤマトの対三越収支は、年間1億円以上の赤字に落ち込んだ。一方、三越の経常利益は100億円を突破する。
倫理感の欠落が許せない。パートナーとして一緒に仕事するのはまっぴらだ。あんな経営者には絶対なるまい。小倉氏は、50年以上取引がある三越との決別を決めた。
以降、ヤマトは新事業「宅急便」に傾倒していく。だが、この事業でも戦いが待っていた。