26日は「プリゴジン反乱」に出演した役者たちはそれぞれ自身の立場をロシア国民に説明する忙しい1日となった。というより、週末の24日の出来事に対して、週明けの月曜日には関係者がロシア国民の前に説明責任が問われたのだ。そのためには、国営メディアのプロパガンダに委ねるより、カメラの前で自身の声で語るほうが得策という判断が働いたのだろう。

ロシア国民に「プリゴジン反乱」について説明するプーチン大統領(2023年6月26日、クレムリン公式サイトから)
先ず、モスクワ進軍を突然中止し、ロストフナドヌーに戻って以来、行方が不明だったロシア民間軍事会社「ワグネル」の指導者プリゴジン氏は音声メッセージで、ワグネルのモスクワ進軍はロシアのプーチン大統領の打倒を目指したクーデターではなく、ウクライナ戦争で多くの犠牲をもたらしているロシア正規軍の責任、国防省幹部たちの指導を糾弾することが狙いだったと説明している。オーディオメッセージがいつ、どこで録音されたかは明らかにされていない。
その数時間前、プリゴジン氏が批判してきたショイグ国防相がヘリコプターに搭乗し、ロシア軍が戦闘しているウクライナ東部・南部戦線を現地視察している姿が国営放送を通じて放映された。ただ、ショイグ国防相の姿は写っていたが、その音声は流れてこない。
欧米メディアは、「この放映が26日に撮られたものか、その前に撮ったフィルムかは分からない」と慎重に受け取っている。明確な目的は、「プリゴジン反乱」があってもロシア正規軍はビジネス・アズ・ユージアルで通常の活動を行っていると国民にアピールすることだったという。
そしてプーチン氏は26日夜、国営放送の通常番組を中断し、国民に向けて演説した。プリゴジン氏を名指しこそしなかったが、24日夜のプリゴジン氏が率いるワグネル軍のモスクワ進軍に言及し、国の安全を脅かす如何なる行為も許されないと厳しく強調した後、ワグネル軍の反乱を大きな犠牲もなく抑えた軍関係者、そして冷静に対応した国民に感謝を述べた。
ワグネルについては、兵士は処罰されないこと、「願うならばロシア正規軍に入るか、ベラルーシに亡命するか、それとも軍務から離れて家庭に戻るかは各自が判断すべきだ」と説明、ワグネルの存続はもはやあり得ないことを確認している。
演説内容を報じたオーストリア国営放送のモスクワ特派員パウル・クリサイ氏は、「演説内容は中身の薄いものだった」と述べていたほどだ。ただ、プーチン氏にとっては、「プリゴジン反乱」後、国内情勢を掌握している自身の姿を国民に見せることが狙いだった、と解説されている。