FIFA女子ワールドカップ2023の開幕を7月に控え、女子サッカー界への注目度が増している。日本の女子サッカーが継続的に強くなるには、日本女子サッカーリーグの最高峰かつ唯一のプロリーグである「WEリーグ」の活躍はもちろん、国内リーグ全体の長期的な盛り上がりが不可欠だろう。
そのためには、まず女子サッカーを多くの人に知ってもらうことが必要だ。現在プレナスなでしこリーグ2部(※)に所属する福岡J・アンクラスのルーキー、MF原日樺に行ったインタビュー内容を交えて紹介したい。
福岡J・アンクラスは、福岡女学院中学校、高等学校のサッカー部として1986年に創設。九州にある多くの女子サッカークラブが地域リーグに所属する中で、ヴィアマテラス宮崎と並びなでしこリーグに名を連ねているが、選手たちは全員が仕事をしながらサッカーに取り組んでいる状況だ。彼女たちはいったいどのような生活を送っているのだろうか。
※プロリーグであるWEリーグ、アマチュアリーグトップのプレナスなでしこリーグ1部に続くリーグ。
サッカーと仕事を両立する原の1日
福岡県出身の原日樺は、福岡大学から地元のアンクラスに加入したルーキー。サッカーと仕事を両立している原に、練習がある日のスケジュールを聞いてみた。
「朝は6時30分に起きています。7時20分に家を出て、グラウンドに着くのは7時30分。そこから身体を動かし始め、8時30分から10時30分までの2時間は全体練習です。終了後は自主練や片付けなどで全部終わるのは11時過ぎ。その後、一度家に帰ってシャワーを浴びてご飯を食べ、13時までに出勤します。19時まで働いて帰宅し、遅くても23時までには寝るようにしています」
大学在籍時は実家から学校へ通っていたそうだが、アンクラス加入後は「1か月間だけ実家から通ってみたのですが、きつすぎて」と、現在は通いやすいように環境を変えている。
「ばりキャリ隊」でやりがいある業務
2022年12月、アンクラスは『ジュニアサッカーNEWS』の運営などを行う株式会社グリーンカードとパートナーシップ契約を締結。原を含む選手5人とスタッフ1人が、グリーンカードの社員としてクラブの営業や広報を担当している。
その業務は通称「ばりキャリ隊」と呼ばれており、博多弁で「とても」という意味と「バリバリ働く」をかけ合わせた「ばり」と、キャリアウーマンを意味する「キャリ」を合わせたネーミングである。
「業務の内容はその日によって違います。企業訪問する日もあれば、企業をリストアップしてアポイントを取る日もあります。また1度訪問して『話を持ち帰ります』となる場合もあるので、そういう企業に対して新しい営業資料を作成する日もあります」
企業にアポイントを取って契約に繋げるのは営業職の中で最も大変な部分だが、企業訪問には選手やスタッフだけでなく、営業スキルに長けた上司も同行し適時サポートに入ってくれる体制が整っているそうで、不安は少ないという。
スポンサーに提案する金額や内容は複数種類あるため「どの金額を言ったらいいんだろう?と悩む場面も多く、やはり金額面の話は難しいですね」と語る原。まだ慣れない面はあるようだが、選手が自ら営業することで興味を持ってもらいやすいというメリットは大きいだろう。
取材時点で2件の契約を成立させていた原は「契約を取れた嬉しさと同時に『結果で返さなければいけない』という気持ちが生まれ、責任を感じます。より一層『頑張らないと!』という気持ちになりますね」と話しており、仕事がサッカー選手としてのモチベーション向上にも繋がっているようだった。