7月に固まる22年度の税収は70兆-72兆円の見通しで、3年連続で過去最高を更新します。消費税収と法人税収の増加によります。
インフレで商品価格が上昇すれば、それにかかる消費税が増え、国庫に入る消費税収(23年度予算では23.4兆円)が増えます。大会社の企業収益も円安効果で過去最高の純利益35.6兆円に達し、法人税収(同14.6兆円)も増えます。
政府、日銀が狙っているのがそういうことなら、いつまで経っても物価抑制、円安阻止に動かないわけです。「2%の物価目標以下に逆戻りする見通しだ」と日銀が繰り返しているのは、動かないための理屈です。
税収が増えても、政治主導で歳出に回してしまったら、財政状態はいつまで経っても改善しない。増額が決まっている防衛費、少子化対策の財源の当てが乏しく、そうなる可能性があります。税収増を国債返済に使うのではなく、歳出に回してしまう。
物価高は国民の暮らしを苦しくする。大企業が潤っても、それが円安によるものなら、その裏側では国民の暮らしが犠牲になっている。しかも円安のおかげで企業収益が増えるので、経営者は企業努力をしないし、株価が上がっているので経営責任を問われることもない。
国民一人当たりのGDPは先進40か国中で38位まで落ち、低迷を続けています。異次元緩和と財政拡大に甘えてきた結果です。日銀の市場への介入が度を越し、市場機能が喪失し、経済が活性化しない。
「2年、通貨供給量2倍、物価2%上昇、デフレ脱却」で始まった異次元金融緩和は10年以上、経ちます。物価が上がり始めたのは、国内の金融政策の結果ではなく、海外要因(コロナ禍、ウクライナ戦争)、輸入物価の上昇の結果です。貨幣数量説は空振りに終わりました。
次に「アベノミクスは財政ファンナス(日銀の国債購入)が本当の狙いだ。円安は金融緩和に付随して起きている」に変わった。最近では「経済成長で財政収支の好転を図るのではなく、消費税と法人税の直接的な増収を狙う。円安は物価高に効く。株高も日本復活の兆しで歓迎する」になった。
異次元金融緩和の狙いが二転三転し、出口が見えないまま迷走を続けているのです。海外は「お手並み拝見」の構えでしょう。長すぎる異次元金融緩和のつけはあまりにも大きいのです。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年6月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。