円安と物価高で税収増を図る
円が1㌦=143円(26日現在)まで下落し、為替安もあり、5月の消費者物価は3.2%まで上がりました。9か月連続で3%を超え、政策効果(物価抑制の補助金政策)がなければ実質4.3%というインフレ状態です。引き締めを続けている米国の4%を上回ります。それなのに日銀は動きません。
メーカーは商品の容量を減らし、見かけの価格上昇を抑えていますから、単位容量当たりの価格動向で考えると、実質4.3%を超えるでしょう。第2次石油危機(1981年)以来、41年ぶりのインフレ到来です。

植田和男氏 NHKより
物価高はまだ進み、高止まりし長期化するとの指摘が聞かれます。そうなる前に緩和縮小・利上げに動き、経済が失速するようなら、金融緩和に戻せばいいのです。金融政策は本来短期的で、柔軟性があるべきです。そうしないのは不思議で、何か理由があるのでしょう。
円の力を示す実質実効購買力は低下し、1973年の変動相場制移行後、最低水準になり、インフレ鈍化の兆しは見えません(日経新聞)。5月の実効為替レートは76.2(2020年=100)です。アベノミクスの異次元金融緩和が始まる直前の2012年12月の1㌦=80円台に対し、最近は143円で、輸入物価を押し上げ、国内の物価高を招いています。
日銀はデフレ脱却の目標にしていた2%を超えているのに、「まだ安定的な数字ではない。コストプッシュ型の上昇であり、また2%以下に戻ってしまう可能性がある」など、理屈をいろいろ言って動きません。
6月の内閣支持率が15㌽も急落し41%、不支持率は44%(読売新聞)となり、岸田政権に衝撃が走りました。マイナンバーカードを巡る失態が直接的な原因のようです。私はそのほか、勢いを増す物価高で国民の暮らしが苦しくなっていることの影響も大きいと思います。
日銀は金利を引き上げませんから日米間の内外金利差(短期金利)は5%まで広がり、海外の投資家の日本株買いが勢いつき、3万3千円まで最近上昇しました。円を超低金利で調達し、投資に回しています。
日銀は大規模金融緩和を維持することを決めていますから、海外投資家にとっては、日本株は安心して投資し、ぼろ儲けができます。その裏では、超低金利・円安で国内物価が上がり、国民の暮らしが苦しくなっています。外国勢が喜んでいる株価バブルの裏側には、物価高に悩む日本国民の暮らしがあります。
「なぜ日銀は利上げに動かないのか」、「円安や物価高騰をいつまで放置しておくのか」。そういう問いをどう考えるかです。
私が思うに、日銀は当初の異次元金融緩和の狙いをすでにすり替えています。「物価上昇は消費税収を増やす好機だ」、「円安を容認して大会社の企業収益を膨らませば、法人税が増える」、「政治が抵抗する国債発行の抑制より、このほうが財政収支の改善に即効性がある」と政府、日銀は考えているに違いないと考えます。