しかし、理想は、法律の手当てではなく、企業や金融機関の自主自律によって、利益相反のおそれが根絶されることである。この点、ミニマムスタンダードの徹底を求める法令による強制を極力回避し、金融機関の自主自律によるベストプラクティスの追求に賭けてきた金融庁は、ほとんどロマンティックといっていいほどに理想主義者である。
実は、金融庁の取り組みは、一定の効果をあげている。例えば、野村證券は、投資信託の取扱商品を決定する際には、グループ会社の商品に捉われることなく、幅広い候補のなかから優れたものを選定するとしている。しかし、これだと、兄弟会社の野村アセットマネジメントの投資信託が採用されたとしても、兄弟会社だから採用されたのではなく、投資信託の質によって採用されたのだという説明も可能なのである。
やはり、理想には反しても、利益相反の事実の証明責任の転換について法律上の手当てを行い、厳格な証明方法を定めることが必須だと思われる。
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森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行