防衛産業の今後について議論するにあたっては、今までの在り方を総括・検証する作業が必要不可欠です。国産に拘った航空自衛隊のC-2輸送機も、海上自衛隊のP-1哨戒機も、開発者の努力には敬意を払うべきですし、機体の性能についても一定の評価は出来るものの、それが本当にベストの選択であったかどうかは客観的に、感情を交えず検証されなくてはなりません。

輸送機は出来るだけ遠くまで飛べて、多くの物資が運べるのが理想ですが、C-2は陸上自衛隊の10式戦車が積めず、不整地離着陸能力に難のある高額の機体を敢えて国産で開発・保有し、世界中で活躍するC-17輸送機の導入は見送りました。

哨戒機は米海軍のP-8を見送り、国産のジェットエンジンを採用した4発機となりました。 陸上自衛隊のNBC(核・生物・化学)偵察車にしても、ドイツ製のフォックス偵察車を早期に導入しておけば、東日本大震災に伴う福島原発事故の対処は随分と違ったものになったはずです。

防衛庁長官在任中、単発エンジンの小型機体で拡張性に難があったF-2戦闘機の調達中止を決定した際、ある防衛庁長官経験者から「国産兵器に対する愛情がない!」と批判されたことがありましたが、そういう感情論めいたものが今でもあるように感じます。

すべてを国産で賄えるに越したことがないのは当然ですが、安全保障環境が予断を許さないものとなり、時間的にも財政的にも余裕がなくなった現下の情勢では、常にどの装備が最も合理的か、を素早く判断し、できれば月単位で導入ができるような体制を整備することも必要だと考えます。

元内閣官房長官・元参議院自民党会長の先生が逝去されました。竹下登元総理の流れを正統に受け継ぐ、真に田舎(「地方」ではなく「田舎」という表現を常に使っておられました)を愛する、人心の機微を心得た立派な方でした。あの出雲弁が聞けなくなってしまったことに、強い寂しさを感じております。

ご生前に賜った幾多のご厚情に深謝し、御霊の安らかならんことを切にお祈り申し上げます。

青木幹雄氏 NHKより

皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2023年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。