飾り立てているだけでは、文質はバランスされません。それは見掛け倒しというものです。人は本当に分からぬものですが他方、時の経過とその人に関わる出来事は人の本質的な部分を露わにします。華が一時あるよう見えたとしても、直ぐ鍍金(めっき)が剝げてしまうわけです。文質のバランスが取れているとは、その文がどっしりとあることが大前提です。内面が素晴らしい人の言動或いは立ち居振る舞いには、様々あらわれてきます。内容ある話ができる人物に対しては、外見上見る目もまた変わってくることでしょう。そうして人に時間を掛け見続ける中で人物像は浮かび上がるもので、それが文質彬彬としていたならば華がある人と言えるのかもしれませんね。

最後に本ブログの締めとして、明治の知の巨人・安岡正篤先生の言を御紹介しておきます。次の言葉は『孟子』、「面(おもて)に見(あらは)れ、背に盎(あふ)る」より述べられたものです。「前はつくろえるが、後はごまかせ」ません――人間は面よりも背の方が大事だ。徳や力というものは先ず面に現れるが、それが背中、つまり後姿―肩背に盎れるようになってこそ本物といえる。後光がさすというが、前光よりは後光である」(『照心語録』)。

編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2023年6月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。