「しまむら」が利益を高くできている理由は徹底した在庫管理にあり

 一方の「しまむら」だが、こちらはグローバル市場というよりも、国内市場を主軸に置くアパレル企業だ。粗利率が低めだが、なぜ高い利益率を出せているのか。

「『しまむら』では、ファストリのようなSPAモデルではなく、製造業者から商品を仕入れるタイプのビジネスモデルとなっています。そしてブランドイメージとして、ファッション性の高い衣服を低価格で販売するというスタンスなので、粗利率が低くなるのは当然です。しかも、アパレル業界はただでさえ流行に左右されやすい業界なので、在庫も抱えがち。ですが、しまむらは在庫コントローラーにより精度の高い需要予測が行え、店舗が抱えるべき在庫数を適切に管理できているので、値引き商品をほぼ発生させず在庫を売り切ることができています。

 また値引きするとしても、タイミングや割引率のコントロールも巧みです。値引きする際に社内の人間が各店舗のデータを比較・参照し、商品の売れ行きがどうなっているかを判断してから値引きするようにしています。値引きする額もまだ各店舗で売れ行きがよかったら1割、早く在庫処分したい場合は半額といった具合に、ほかの企業よりも厳密に設定している節がありますね」(同)

 徹底的な売れ行き予測、在庫管理により地道に利益を追求する姿勢こそが「しまむら」の強みとなっているようだ。

「また客層を広げる戦略も功を奏したといえるでしょうね。従来、しまむらは主婦層をメインターゲットとするアパレルブランドでした。しかし、2010年前後から『しまらー』と呼ばれる存在に代表されるように、『しまむら』の衣服を身に着けることがオシャレになるというイメージづくりに成功し始め、今では若者も『しまむら』に訪れることが珍しくなくなっています。そこからメンズ、キッズ層にも行き届くブランディング戦略を手がけており、品ぞろえも強化するようになったんです。最初こそ苦戦したものの、徐々にそのイメージづくりが浸透していった印象があり、今の成功につながっているのではないかと思います」(同)