グローバル・インテリジェンス・ユニット シニア・アナリスト 原田 大靖
去る2022年12月9日、日英伊三か国首脳は、次期主力戦闘機(第6世代戦闘機)の共同開発協力に関し「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)に関する共同首脳声明」を発出した。「防衛費増額」を巡る議論の中で、注目度が相対的に低くなってしまった次期戦闘機に関する報道であるが、今次「声明」は異例の「米国切り」であるとも言われており、今後も一波乱ありそうな様相を呈している。そこで、本稿では、日米のこれまでの戦闘機開発をめぐる“角逐”を踏まえつつ、今後の日英伊による次期戦闘機共同開発において求められる視点を考察したい。

図表:次期戦闘機のイメージCG (出典:防衛省)
米国はこれまで我が国独自の戦闘機開発には猛反対し、少なくとも主力戦闘機は米国製の購入を、支援戦闘機は米国との共同開発を、それぞれ迫ってきたという経緯がある。我が国航空自衛隊は、米マクドネル・ダグラス社(現ボーイング社)が開発し、1972年に配備が開始された「F-15」を今でも主力戦闘機として配備している。その後、次期主力戦闘機として、ステルス性能も備えた「F-22ラプター」の導入も目指していたが、これには米国が軍事機密の流出などを理由に挙げ、輸出に難色を示していたことから、結局、「F-22」と同様にステルス性能を持つ「F-35ライトニング」が採用されることとなった。

図表:我が国の将来の戦闘機体系イメージ (出典:防衛省)
「F-22」が空対空戦闘用に特化し、ステルス機として「絶対的な優位性」をもっているのに対し、「F-35」は、空中での司令塔として開発され、地上への爆撃、監視任務など様々な機能を詰め込み過ぎているともされているがゆえに、様々な問題点も指摘されている。さらに「F-35」は「史上最も高額な兵器システム」(米政府監査院(GAO))とも言われている。ロッキード社は、当初、「F-22」も我が国やイスラエルへ輸出することを検討していたというが、「軍事機密の塊」であるとして米国議会はこれにストップをかけた。そして、オバマ政権の誕生で「F-22」の生産自体がストップすることとなり、結局、「F-22」の技術は米国が独占し続けることとなった。
ここで強調したいのは、「F-22」の「絶対的な優位性」を支える技術の根幹は我が国由来のものであるということである。「F-22」の機体には、三菱重工が開発したカーボン一体成型技術が使用されているが、これは、支援戦闘機「F-2」を日米で共同開発をした際に、米国側に技術供与されたためである。

図表:「F-22ラプター」(上)と「F-35ライトニング」(下)の比較 (出典:Military Machine)