また、「イスラム寺院内でイマーム(指導者)から過激思想を学ぶ若者たちが多かったが、オーストリアのケースでも分かるように、彼らはイスラム寺院ではなく、インターネットを通じてイスラム過激思想にかぶれていく。彼らはイスラム教についてよく知らないが、一種のポップカルチャー化して、それに惹かれるという傾向が見られる」という。

テロ対策当局はイスラム過激派の温床と見られてきたイスラム寺院の監視を強化、外国出身のイマ―ムの国外追放などを実施してきたが、潜在的イスラム過激派はもはやイスラム寺院ではなく、インターネットを通じてイスラム過激派と接触しているわけだ。そのため、治安関係者は対策で更に難しくなった。ソーシャルネットワークの監視を強化して、イスラム過激思想を広げるサイトの閉鎖などに力をいれなければならなくなってきた。オーストリアの今回のテロ事件はそれを改めて明確に示しているわけだ。

テロだけではない。犯罪の犯行年齢が下がってきているのだ。ドイツで今年3月11日、12歳、13歳の少女たちが同級生を殺すという事件が発生した。「ルイーゼ殺人事件」と呼ばれる事件は独ノルトライン=ヴェストファーレン州の人口1万8000人の町フロイデンベルクで少女2人がナイフで12歳のルイーゼ(犯行者の同級生)を殺害した事件だ。犯人が12歳、13歳という年齢だったこともあって、ドイツ国民に大きな衝撃を投じた。また、セルビアの首都ベオグラードで5月3日、初等学校(小学校=8年制)の13歳の7年生生徒が校内で銃を乱射し、8人の生徒、1人の学校警備員を殺害するという事件が発生し、セルビア国民に衝撃を与えたばかりだ。

なお、オーストリアの治安関係者は、「コロナのパンデミックで静まっていたイスラム過激派グループがここにきて再び活発化する動きが見られる」と警告を発している。イスラム過激派テロに惹かれる年齢が低下し、過激派組織に入らずに単独でテロを行うローンウルフが増えてきたことなどから、テロを未然に防ぐことが益々難しくなっている。

「ドナウ島祭」(Donauinselfest)同イベントHPより

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。