どんなに毛深い人でも“モフモフ”の動物たちほどの体毛は生えないが、もしも彼らと同じくらいモフモフだった場合、人間の身体にもシマウマや三毛猫のようなユニークな柄のパターンがあらわれてくるという――。
人間の皮膚に描かれた模様「ブラシュコ線」とは
髪を七三に分けるにしても人によって右分けか左分けかが違ってくるが、それは頭のてっぺんの“つむじ”の具合が影響していることは明らかだろう。
もしも頭髪並みに体毛が濃かった場合、人間の体表にもつむじのような模様のパターンがあらわれてくるというから興味深い。これは「ブラシュコ線(Blaschko lines)」と呼ばれる皮膚構造のパターンである。

ドイツの皮膚科医アルフレッド・ブラシュコ(1858-1922)は、20世紀初頭までに50人以上の被験者の皮膚を研究した。彼は身体全体のホクロ、アザ、その他の皮膚の状態のパターンに注目し、それらが一定の線に従っているように見えることを発見したのだ。
ブラシュコ線は出生時にすでに存在しているもので、血管や神経などの他の既知の身体システムとは無関係であった。背中ではV型ライン、前胸部~側胸部ではS型ライン、四肢では垂直のラインを描いている。
頭皮のつむじや首のうねりなどのブラシュコ線の詳細なパターンは、100年後に医師のルドルフ・ハップルによって図にされた。
これらのブラシュコ線は、胚の発育中に細胞が分裂して皮膚に成長するまでの軌跡をたどったものであると現在考えられている。具体的には膚表面の主要な細胞であるケラチノサイトと、皮膚の色素を担う表皮深部の細胞であるメラノサイトの経路によって形作られる。
このように一部のパターンは線として表示されるが、他のパターンはより大きなパッチとして表示される。遺伝子パターンのパッチワークはモザイク現象と呼ばれ、X染色体に関連する形質だけでなく、発生初期に発生する突然変異でもあらわれる可能性がある。
