日銀の統計資料によれば、日本人の個人金融資産の約55%は預貯金に滞留しています。

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これは1990年代以降の日本国内のデフレ環境が影響していると思います。長期にわたり物価が安定、あるいはマイルドに低下する状況が続きました。

このような状態では、預貯金を保有していれば、実質的な資産の目減りが起こらなかったからです。物価が下落すれば、むしろ預貯金の実質的な価値の上昇をもたらします。

株価が低迷し、円高が進む中では、投資をしないで預貯金に滞留させておくのが合理的だったのです。

ところが、昨年以降の経済環境は大きく変わりました。ウクライナ情勢を契機に世界的なインフレが始まり、日本人のデフレマインドが少しずつ修正されています。

国内の消費者物価もついに目に見えて上昇を始めました。数年前には100円程度で買えたコンビニのおにぎりは、高級品になると300円。写真の赤坂のおにぎり専門店のおにぎりは、1個400円以上します。

東京のオフィス街のランチも以前は1000円を超えると高いというイメージだったのに、今や1200円でも違和感を感じなくなりました。

このインフレ傾向が日本でも続けば、預貯金を保有していることはリスクになるという認識が広がります。