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車の「ボアアップ」、もともとチューニングではなかった?
NAエンジンのチューニングとして定着した理由は?
車の「ボアアップ」、もともとチューニングではなかった?

NAエンジンのチューニングとして広まったボアアップ。最近では聞きなじみのない人も多いでしょう。
かつて、車のエンジンに鋳鉄が使われていた時代は、長期にわたってエンジンを使用すると、シリンダーの内壁が傷つき、オイル漏れや圧縮漏れといった不調が起きるとともに、エンジン性能が少しずつ落ちていきました。
この時、不調の原因となるシリンダー内の傷を、コンマ数ミリ単位でボーリングして削り取り、傷を無くす作業を行います。エンジン内部のシリンダーを削ることで、内径が一回り大きなシリンダーになり、シリンダー径(ボア)を大きく(アップ)することから、「ボアアップ」と言われるのです。
この作業を、シリンダー傷の有り無しにかかわらず、シリンダー径を大きくし、エンジンパワーを上げる理由で行う改造を、「ボアアップチューニング」と呼んでいます。
NAエンジンのチューニングとして定着した理由は?

もともとは修理や整備の手法だったボアアップが、どうしてチューニングとして用いられるようになったのでしょうか?
NAエンジンでは、ターボエンジンのようなパワーアップチューニングは難しくなります。ターボエンジンであれば、タービンを大型化するなど、部品交換等で比較的簡単にエンジンパワーを上げることができますが、タービンのないNAエンジンでは、パワーを上げるチューニングがほとんどできないためです。
そのため、シリンダー径を拡大し、同時にピストン径を大きくして排気量アップを図ることができるボアアップは、かつてNAエンジンのパワーアップチューニングとして定着したというわけです。
しかし、エンジンシリンダーをボーリングするための専用設備や、作業を行う技術者の熟練の技術が必要なため、個人が手軽に行えるチューニングではありません。繊細な技術が必要となるチューニングで、NAエンジンのパワーアップのため、最後にたどり着くステージとも言えます。