確定的な証拠はないものの…業界が抱える構造的な問題

 いまだ全容が見えてこないビッグモーターの体質。同社の問題や疑惑に対して、萩原氏は次のように語る。

「擁護する気はありませんが、タイヤに穴をあける映像に関しては確実な証拠が集まっているワケではありませんから、現時点の情報だけでの批判は控えたいと思います。

 ビッグモーター側としても、黙殺を貫いているというのは最善とはいえませんが、マシな選択ではあるでしょう。仮に謝罪文を公表すれば揚げ足取りする声が届くでしょうし、否定するコメントを公表すれば、さらに炎上騒ぎになる可能性があります。とにかく証拠が出そろっていない以上、“沈黙”が最適な行動と判断し、今に至っているのだと考えられます。また上場企業ではないので、株主から強く追及される心配がないことも主な理由でしょう」(萩原氏)

 ビッグモーターに限った話ではなく、中古車業界そのものがかなりグレーであることを無視してはいけないと萩原氏は指摘する。

 中古車メディア「カーセンサー」の調査では、2021年の中古車業界の市場規模は4兆1699億円にも上り、2015年と比べ約1.5倍もアップしているが、こうした順調な成長には裏があるのだという。

「中古車販売業は、基本的に手数料ビジネスとなります。いくら車両本体価格が低くても、税金以外の『名義人変更料』『納車手数料』『車庫証明代行料』といった諸費用が追加で発生したり、ローン支払い時の金利が高く設定されたりと、結局費用がかさばるケースはあり得ます。そういった手数料などの価格に相場はあるものの、その企業ごとに自由に設定しても問題はありませんので、金額を高めにして利益にすることもできてしまうのです。

 昔から中古車業界は、実は買取・販売したクルマの差額で売り上げるビジネスモデルではなく、こうした手数料で儲けを出して成長し続けてきたという経緯がありました。裏を返せば、手数料ビジネスだけでここまでの市場規模に成長したとなると、大っぴらにはできない強引な営業が横行している企業があることも考えられます。クルマに詳しくないお客でしたら、本来であればそこまで金額をかけなくてよいサービスにお金を支払ってしまう、ということも可能性としてありうるわけです。

 また、市場拡大を背景に事業規模もどんどん大きくしていくとなると、人材不足で苦しむ店舗も出てくるはず。特に車検ができるスタッフがいない、というのは業界内でよくある話でして、今回のFRIDAYで報じられた無資格のスタッフが車検をやっていたという問題に関しても、決して許されるべきことではないですが、背景は想像できるので驚くことはありませんでした」(同)

疑惑の目が向けられても納得してしまう中古車業界の構造

 中古車販売業は、中古車を安定して確保することがビジネスの要だ。そして当然、安く買い取れるに越したことはない。そのための工夫も、意外なところで施されているという。

「中古車業界は、海外販売にも力を入れており、企業によっては国内よりも利益が大きいところもあるでしょう。しかし、そうなると中古車が国内市場に出回らなくなり枯渇化するので、なるべく多く中古車を仕入れなくてはいけません。

 そこで各社はサイト上で一括査定ができるようにしており、所有しているクルマがどのくらいの価格で売れるのか、サイト上で簡単に割り出せるようにしています。大手ほど、そのときの査定は相場より高額になりやすいのですが、いざ店舗で査定すると、減点方式でさらに細かく調査され、結果的に実際の買取価格はサイト上の一括査定よりだいぶ低くなってしまう、というケースも珍しくはありません」(同)

 倫理的にギリギリの線を攻めて中古車の売買を進め、業績を伸ばしてきた中古車業界。したがって業績拡大に躍起になった結果、問題が発生し、疑惑の目を向けられてしまうことも否めないという。

「ビッグモーターに関しては、グループ内の店舗同士の競争も苛烈でしょうし、客観的に見れば企業としての風通しも悪いと感じます。確定的な証拠が出ていないため、何も断定できませんが、中古車市場の構造的に“ビッグモーターなら報道にあったようなことが行われていてもおかしくない”という見方が、残念ながらできてしまうのです」(同)

 全容が明かされるためにも、さらなる詳報を待つばかりだ。

(取材・文=A4studio)

提供元・Business Journal

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