ブリンケン氏は、習近平主席とも19日、約35分と短いながらも人民大会堂で会談を果たしました。米国務省の声明によれば、会談の冒頭でブリンケン氏は「バイデン大統領は、米中は両国の関係を管理する義務と責任があると信じているため、私に訪中するよう要請した」と説明。習主席は「安定的な米中関係」の必要性をアピールしたほか、CCTVで「率直で深い話し合い」ができたと明かし、いくつかの “特定の問題” について、進展と合意が得られたと表明していました。中国外交部が発表した会談に関する声明は、こちらでご覧になれます。

画像:習氏と会談したブリンケン氏、「率直で実質的、建設的な会談だった」と明記

abc (出所:Secretary Antony Blinken/Twitter)

ブリンケン氏の訪中をめぐっては、バイデン氏が5月の広島G7サミット閉幕後の記者会見で米中関係の「雪解けが近い」と発言したことが思い出されます。振り返れば、6月にバーンズCIA長官が5月に中国を極秘訪問していた事実が報じられており、この件を指していたのでしょう。今回の米中の歩み寄りは、2024年1月の台湾総統選挙、同年11月の米大統領選挙を前に、両国が対話を重視する必要性に着目したに違いありません。その上で、9月にインドで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議、あるいは11月に米国で予定するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で米中首脳会談が実現するのか、これからが両国関係改善の正念場となりそうです。

少なくとも、中国側にしてみれば成果は小さくなかったのかもしれません。ブリンケン氏は訪中を終え、NBCとのインタビューで(偵察気球問題の)章は閉じられるべきだ」と発言し、前向きな対話への一歩を示しました。実現すれば、2022年11月のG20サミット以来となります。

もうひとつ明るい材料として、中国側が用意した蓮の花が挙げられます。両者のテーブルの間に飾られた蓮は、中国語 「荷 (hé)」と発音するのですが、これは平和「和 (hé)」と同じなんですって。約35分間と短い会談だったものの、中国側からは少なくとも衝突を回避しようとするメッセージが添えられたことになります。

中国といえば、3月に米国債保有高(短期債含む)を2022年7月以来増加させ、8,693億ドルとなっていました。4月は8,689億ドルと小幅減にとどまり、足元で国債の売却ペースが急速に落ち込んだ点も注目されます。

チャート:中国の米国債保有高、2023年に入り減少ペースは鈍化

ustc (作成:My Big Apple NY)

中国は鈍い中国景気回復を受け、トランプ前政権の置き土産である対中追加関税の撤廃を引っ張り出したいところ。2024年の米大統領選前に妥結の可能性は極めて低いながら、虎視眈々と糸口を探っていることでしょう。

編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年6月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。