バイデンは40年後に評価される

現在、バイデン大統領が現在置かれている状況は1980年にカーターの境遇と極めて近い。

まず、両者は海外の戦争に端を発したインフレで国内が不況に陥っている状態で大統領選に突入しようとしている。次に、両者共に党内からは不出馬を望む声が強くあり、予備選ではケネディ家の人間からの挑戦に直面している。3点目の特徴としてライバル共和党の大統領候補が岩盤支持層から熱狂的な支持を寄せられている人物である(共和党支持者の間では圧倒的な数値でトランプとレーガンが偉大な大統領として挙げられる)。

また、40年後に振り返れば評価される功績が多々あるという点でもバイデンはカーターと瓜二つだ。

バイデンは大統領の任期としてまだ3年も立っていないが、既にインフラ法案や銃規制法案、チップス法などといった超党派の法案をいくつも成立させている。また、トランプ政権後に失墜した同盟国から信頼を回復させ、米国の世界的なイメージを改善させた。ポーランドに落下したウクライナミサイルをめぐる対応も上院外交委員長、副大統領としてアメリカ外交を動かし続けたバイデンならでは冷静な判断だった。

しかし、今の世論はバイデンは客観的に評価できる状況にない。今年で81歳になるバイデンに果たして政務遂行能力があるかを疑問視する層は民主党内でも増えている。そして、健康状態が不安視されるに伴い、泡沫候補と目されていた環境弁護士であり、反ワクチン活動家でもあるロバート・ケネディ・ジュニアに民主党内の支持の2割近い支持を奪われている。

仮に、ケネディが報道されているように予備選での序盤戦で勝つことがあれば、彼の叔父のエドワード並みの支持を獲得してもおかしくないほど、バイデンの政治的立場はもろい。

バイデン政権がスタートした直後、カーターの二の舞にはなってはならないと取り巻きは息まいていた。しかし、皮肉にも、歴史の奇妙ないたずらでバイデンはカーターと同じ道を着実に歩み始めている。