ここで私からはもう一つの事例として、入管法改正反対・廃案とほぼ同じメンバーが与党案に対する反対運動を展開していたLGBT理解増進法について触れたいと思います。

LGBT理解増進法の修正協議当事者として、賛成派・反対派の双方から、LGBT当事者も含めて多くの声を伺ってきました(維新は保守側からしか話を聞いていない!というのは明確に誤りです)。

その中で、いわゆる保守側の人たちは、基本的にLGBT法案の成立に強く反発して廃案を求めつつも「どうしても通すなら、条文のここをせめて直してくれ」という具体的な妥協案・修正案を示されてきたことが印象的でした。

そうした提案も含めて、複数箇所の条文修正を多角的に検討し、実際に5箇所を修正して提示したのが維新・国民案です。

一方で野党案の理解増進法成立を目指す方々は「与党案や維新・国民案はとんでもない。野党案に戻してほしい」という主張が中心で(すべての方がそうではないですが)、着地点を見出すのは難しかったのが正直なところです。

その中でなんとか、独自にジェンダー・アイデンティティという折衷案をひねり出したわけですが…。

もちろん、野党案を推していた当事者・支援団体からすれば

「そもそもは差別解消法を求めてきたので、野党案(超党派案)の理解増進法がすでに我々にとっての妥協点なのだ。これ以上の譲歩はしたくない」

という考えになるのはわからなくもありません。むしろ超党派案にも携わっていたものとして、心情としては大いに理解します。

しかし現実に法案審議が進み、与党案で押し切るか廃案になるかという状況へと進みつつある以上、そこから歩み寄れる一致点を探すしかありません。

逆にこの状況は与党側・保守側からすれば

「そもそも法案を今国会で成立させる必要などないのに、首相補佐官の失言で野党側が大騒ぎしたから、妥協して法案成立を目指したのだ。ならば、法案の中身をコンサバにすることくらいは当然だ」

という主張になりますし、お互いがお互いに「妥協する不満」を抱えている以上、100か0かという決着はありえず、勇ましい言葉で相手を非難するのではなく歩み寄りをする努力が必要になります。

こうした法案形成のプロセスの中で、私の地元事務所が約50人のデモ隊に取り囲まれるという事態も発生しました。

しかしこうしたパフォーマンスにはなんら意味はなく、橋本氏が指摘をする「本当の闘い」方こそが本質ではないでしょうか。

私は入管法改正もLGBT理解増進法案も、100点満点ではない形であっても、成立をしてよかったと思っています。また、成立してよかったと思える未来を創ることこそが、これらの法案に携わったものの責務であるとも感じています。

立法者として感じること・学ぶことの多かった今回のプロセスを糧に、より良い政策立案に向けて不断の努力を続けてまいる所存です。

それでは、また明日。

4月28日 入管法改正案を可決した衆院法務委 NHKより

編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2023年6月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。