もし万一、そんな「カギ」が見つかるのなら、警察も裁判所も自衛隊も不要となろう。少なくとも私は、NHKの夢想論より、以下の古典的名著に得心する。
人間は戦争を止められない。止められないから軍隊を必要とする。この地上から軍隊が無くなる日、それはすべての人間が全くの獣か、それとも全くの天使になる日である。(中略)人間の中には天使と獣がいる。獣しかいないのなら、或は天使しかいないのなら、人間は決して殺し合ひをしないであろう。
(松原正『我々だけの自衛隊』展転社・原文の歴史的仮名遣いママ)
同番組は冒頭、俳優の鈴木亮平さんが、こうナレーションした。
今も各地で激しい争いが続くなか、反戦と平和への願いを訴える人々。その一方で生み出され続ける新たな兵器。次の戦争の備えが、もう始まっている。
最初は、ウクライナなどの戦闘場面を流しながら。続けて、「2023年3月 千葉 幕張 防衛・セキュリティー総合展示会」(番組テロップ・以下同)の映像を流しながら、上記のナレーションで視聴者を導入した。
展示会場には、多数の自衛官の姿も映っていた。加えて番組は、熱心に装備品の説明を受けている、陸上自衛隊の制服を着た3名の幹部自衛官をアップで映した。
それだけではない。「ウィンドーショッピングですね」と哄笑する「来場者」や、「標的を簡単に〝料理〞できますよ」と説明する「軍需企業」の職員らを映しながら、「いったい私たち人間とは何者なのか?」と問いかけた。
じつに悪質な印象操作としか、言いようがない。俗悪なパシフィズム(反戦反軍平和主義)が番組を覆っていた。
ちなみに、スタジオには「専門家」として、「人間の社会や文化のあるべき姿を模索」しているらしい「総合地球環境学研究所 所長」の「山極壽一さん」が登場。番組は触れなかったが、山極所長は、軍事研究を全否定した日本学術会議の第24期会長であり、同方針の中核的存在である。
番組後半には、「世界の紛争地で平和構築を目指す」「認定NPO法人REALs理事長」の「瀬谷ルミ子さん」もスタジオに登場した。TBS「サンデーモーニング」のコメンテーターとしても知られ、『職業は武装解除』(朝日文庫)と題した自著もある。
他に、「古代エジプトの社会構造を研究」する「名古屋大学高等研究院 准教授」の「河江肖剰さん」を含む以上3名の人選が、放送法の求める編集姿勢(公平など)に合致しているだろうか。
シリーズ2回目にして、はや、この有り様。先が思いやられる。