『次の天皇は秋篠宮さまか、悠仁さまか…私が「皇嗣というジョーカー的立場」に期待していること 「皇嗣は皇太子より格下」は間違っている』という記事をあるところに書いた。詳細はリンクをご覧頂きたいが、ここでは、その概要を紹介するとともに、世上では『皇嗣は皇太子より格下だ』という誤解があるので、糺しておきたい。

NHKより

また、秋篠宮皇嗣殿下ご夫妻の英国王戴冠式出席について解説しておこう。

秋篠宮殿下の称号は、皇嗣殿下である。英語だとクラウン・プリンスが似た表現で、フランス語だとプランス・エリティエということになる。また、より広く推定相続人(expectant heir)という言葉もあって、エリザベス女王は即位までこの肩書きだった。

外国の皇嗣は、さまざまな称号があっても大体「皇太子」と訳されるが、ベルギーのボードワン国王時代にのちのアルベール二世が皇嗣だったときは、日本のマスコミは「皇太弟」と呼んでいた。しかし、サウジアラビアなどについては、いまのサルマン皇太子は、はじめての第三世代で、これまではずっと兄弟での継承が続いてきたが、弟でも皇太子と呼んでいた。

今上陛下のご即位のときに、皇位継承順位第1位の秋篠宮殿下をどう呼ぶか、議論になったが、秋篠宮皇嗣殿下と呼ぶことになり、立太子礼にかわる立皇嗣礼が行われた。

皇太子と皇嗣の実務的な違いは、家計が上皇陛下ご夫妻、両陛下、愛子さまが使われる内廷費でなく、皇族費として独立して支払いを受ける点だ。

いずれにせよ、秋篠宮殿下と同じ立場の外国の皇嗣をマスコミは皇太子と呼んでいるし、「弟である皇嗣殿下だから子である皇太子殿下より下」というのはありえない。

むしろ、年齢も含めて皇太子より重んじられることが多く、英国王戴冠式で他の国の皇太子より上位の序列を与えられた。

ただ、秋篠宮殿下については、本当にそういされるのかという問題もある。そのあたり参考になるのは、ベルギーのケースである。経緯を『英国王室と日本人:華麗なるロイヤルファミリーの物語』(小学館、八幡和郎・篠塚隆)から紹介しよう。

二代前の国王であるボードワンは名君で、言語対立と小党分裂で首相指名が難航するベルギーにあって、実質的な政治的調整に活躍した。留学中の今上陛下の面倒を親身になってみてくれたのも、ボードワン国王夫妻であった。