維新は大阪や兵庫で、公明候補が出る選挙区で対立候補を立てるといっている。前回の選挙の時と違って、大阪府議会だけでなく、大阪市議会でも維新は過半数を獲得したので、公明の協力が不要になったからだ。
ただ、公明との関係を後戻り出来ないことにするのは、維新も望まないだろうから、維新がすべての選挙区で候補を擁立しないだろうし、立てない見返りに東京で公明が維新に協力する可能性はおおいにある。というかあうんの呼吸でも自然とそうなるだろう。
となると、東京での自民党の惨敗は不可避であるし、公明党の自民への悪印象は全国的に波及するから、公明がよい印象をもっていない保守系の候補を中心に、世論調査以上の影響があり、自公でも過半数割れもあり得る情勢だった。
これでは、先に行けば、見通しがあるわけでないが、とりあえず、解散を延期せざるを得なかった。
自民党支持者、とくに保守派は、議席数に比して政策的に公明党に引っ張られすぎだと思っている人がいるが、これは勘違いである。そもそも、議席数が問題なのではない。自民党が選挙で公明に貸をきちんとつくったら政策では立場が強くなるが、借りの方が多いから逆になるだけである。
現状では、自公の選挙協力で、自民から公明に流している票より、公明から自民がもらっている票のほうが明らかに多い。とくに東京などではそうだ。それでは、政策で公明党に譲歩せざるをえないのは当然だ。
どうしてそうなのかというと、公明党は支持者に対し、公明党でなくても協力している党や政治家に投票してくれと頼むことができる。
また、どの程度、票を回すかと言うこともある程度コントロールできる。一方、それに対して、自民党はそれができないからなのであるということのメカニズムは、「日本の政治「解体新書」:世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱」(小学館新書)で詳しく説明した。
公明との連立を解消して維新と組めばいいという人も自民党にいるが、野党第一党になることが射程内に入った維新にとって、メリットがない。
自民党が連立を解消したら、維新・公明・国民に立憲民主党の穏健派や自民党の一部も合流するのは比較的容易なのではないか。希望の党+公明党だからかなり強い。それこそ、保守派にとって最大の悪夢のような気がするのだがどうだろうか。
本稿では、触れなかったが、自公の対立の影には、LGBT問題がある。これについてはさらに、「民族と国家の5000年史~文明の盛衰と戦略的思考がわかる」(扶桑社)でも、根本問題は何かについて触れているが、あらためて近いうちに紹介したい。