ビリャルバ医師の手術編成チームでは、次のような結論に達した。「海綿状血管腫を剥離し摘出ができるかどうかわからない。そこまで到達するまでの範囲は非常に狭い。もし摘出できない場合は、そのままの状態にしておこう」「(即ち)手術室に入った状態で、そこから出る時も(5カ国の言語能力を)傷つけない状態で出る」という合意に到達した。

また同医師がアニーさんに状況を説明した時に、彼女は「覚えた語学のどれかを喋れなくなると考えると悲しくなる。でも、大事なことは私の命だ」と感じたそうだ。実際、それを放置しておくと脳出血を発生する可能性もあり命に関わる。また彼女が手術を受けることを決心したのは「ビリャルバ医師が『あなたにはこれから先、まだまだ長い年月がある。海綿状血管腫はあなたに問題をもたらすようになる。あなたが私の妹だったら手術を受けるように勧めます』という言葉だった」そうだ。

開頭中、目覚めた状態での6時間の手術

手術は午前9時から開始された。開頭しての覚醒下手術だ。ファン・フェルナンデス麻酔師が麻酔を開始した。皮膚を切り、頭蓋骨を外すまでは全身麻酔で進めた。アニーさんの助けが必要になった時点で彼女が眼を覚して意識を取り戻しておく必要がある。その時は脳の局部麻酔が効果を発揮しておく必要がある。

彼女が目を覚まして意識を回復した時点で画面に出た映像を見ながらそれを5カ国の言語で表現してもらうのだ。脳の各部に刺激を与えながらそれを確認し、脳のどの部分が5か国語の言語能力とその表現の安易さに影響しないかということを確認するのである。

そして、この言語能力に影響しない箇所を顕微鏡下で確認しながら侵入してこの腫瘍を摘出させるのである。言語に関係した脳の部分には該当する言語のミニチュア国旗を置いて行くのである。

途中、手術チームは複雑な場面にも見舞われた。しかも内出血していた影響で、すこしづつ腫瘍を摘出することを余儀なくさせられた。

手術から数日後に共振コントロールで100%腫瘍を摘出できたか確認する必要がある。手術が終了したのは午後3時。6時間の手術であった。

数日後に腫瘍はすべて摘出されたのが確認された。それからひと月が経過した彼女は5か国の言語能力に全く支障がないのというのを彼女自身で確認できた。唯一、喋るのに敏速性が少し欠けているように感じているが、これも時間の問題だと彼女は感じている。退院した時に彼女の子供を見た時に非常に大きくなったと感じたそうだ。

この手術の成功で、彼女はこれまで通りの言語能力を利用して仕事を続けることが約束された。しかも、以前のように通訳の仕事中に不安を感じることもなくだ。