私が思うに人間の価値とは、とどのつまり品性であり、そこに尽きるでしょう。隠そうにも隠せるものでなく、必ずあらわれてくるのがその人の品性であり、その人の真価というものであります。「経営者が為さねばならぬことは学ぶことが出来る。しかし経営者が学び得ないが、どうしても身につけなければならない資質がある。それは天才的な才能ではなくて、実はその人の品性なのである」とは、ピーター・F・ドラッカーの言葉です。人間としての品性を高位に保つは難しく、だからこそ平生の心掛けを大事にすると共に、必死になって学問修養をして行かねば、品性は決して磨かれないのです。様々な事柄の結晶がそこに凝縮され結果として、品性ということで全人格的に集約されるのだと思います。

私はまた同時に人間として、自分の為だけでなくどれだけ人の為に自分のエネルギーや知恵を費やしたかも大事だと思っています。自分がやろうとしたことを自分が決めた通りにやり抜きましたということだけで、人の為にならなかったとしたら、その人は果たして偉かったと言えるのでしょうか。勿論、当代の人には分からなかったとしても、時の経過とともにその価値が理解された、といったケースもあるとは思います。だから、第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの言にあるように、「人間の真の価値は、何を目指すかによって判断される」のです。人間の真価というのは所詮、人の為「何を目指すか」で、はかられるべきだと思います。

編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2023年6月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。