1. 不正受診は事務員が肉眼でチェック

    日本のマイナ保険証のシステムでは不正受診は防止できないことは以前の論考で説明しました。日本においてもデジタル保険証を新設し、病院窓口では写真付きのカードを事務員に渡し、事務員が肉眼で本人確認すればよいと思います。マイナ保険証の顔認証システムは精度が低いため、実用的とは言えません。

    カードリーダーで暗証番号を入力させることもトラブルの元です。高齢者の場合、暗証番号を忘れてしまう危険があります。従来の保険証のように単にデジタル保険証を病院の受付にだせば、それだけで受診できることが望ましいです。

  2. デジタル保険証を強制するべきではない

    もともとマイナ保険証は従来の保険証との選択制で運用される予定でした。ところが、唐突に従来の保険証の廃止が決まってしまったのです。医療の現場の意見に十分に耳を傾けずに、一方的にこのようなことを決めてしまいますと、現場の混乱は避けられません。

    まず選択制で開始して、問題点を一つずつ解決していき、徐々に普及率を高めていくべきでした。拙速な強制は国民の反感を生むだけであり、よい結果を招きません。

    最後に

    デジタル保険証の制度は、維持・更新のための国民の負担が少なく、機器の故障に対応でき、高齢者に優しく、国民に利便性があり、不正受診を防ぎ、国民に信頼される制度でなければなりません。

    現在のマイナ保険証がこれらの要件を満たしているとは、私にはとても思えません。一度立ち止まって制度を見直すべきです。

    台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏の言葉をもって今回の論考を終わりとします。

    堤:テクノロジーの進化はいつも、少し先の未来をまぶしく見せるから、私たちはつい、人間のメンタリティーとの時差を忘れてしまう。でも、少し立ち止まって、例えば「民主主義」という軸でもう一度考えてみると、ここで「選択肢を与える」かどうかが、その後やってくる社会の明暗を分けるのではないか、と思うのです。

    タン:私もそう思います。強くそう思う理由は、デジタルはほかに選択肢がなければ、権威主義的なものになってしまうからです。デジタル化によって国民がリスクを減らしたり、時間を節約したりできるよう支援するはずだったのが、デジタル技術への適応を強制してしまっては、権威主義になってしまい本末転倒です。台湾でわれわれ政府側はつねに、強制ではなく支援するほうにフォーカスしたいと考えています。

    【補足】 電子証明書の更新はスマホからでも可能だと言う人がいましたので調べてみました。

    マイナンバーカード総合サイト に次のように記載されています。

    更新方法

    有効期限通知書に申請書IDの記載のある方 申請書IDの右側に「交付申請用QRコード(URL)」があります。 QRコードを利用したスマホ申請を、ぜひご利用ください。

    一見するとスマホでも更新可能なように読めます。

    しかし、同じページの電子証明書(PDF)には次のように記載されています。

    電子証明書は、オンラインで確実な本人確認を行えるものであり、発行には対面での厳格な本人確認が必要なことから、市区町村等の窓口でのみ更新できます(スマートフォン、パソコンによる申請はできません)。

    スマホによる更新は無理なようです。

    なお、このページには次のような理解に苦しむことが記載されています。

    更新にはカード交付時に設定した暗証番号が必要です

    1.署名用電子証明書・・・・・・・・・6~16桁の英数字 2.利用者証明用電子証明書・・・・・・4桁の数字 3.住民基本台帳用・・・・・・・・・・4桁の数字

    1と2は分かります。 問題は3の住民基本台帳用の暗証番号です。マイナカードの電子証明書の更新になぜ住民基本台帳用の暗証番号が必要なのか、 全く理解できません。