75〜84歳は2021年までは増加が見られなかったが、2022年になってやや急峻な増加が見られた。各年齢群間において、死亡数の推移に大きな違いが見られたこと、とりわけ、90歳以上の超高齢者で、急激な死亡数の増加が見られていることから、高齢化に伴う各年齢人口の絶対数の変化が超過死亡に影響している可能性を考えた。

図4 過去10年間における年齢群別死亡数の推移

図5には、過去10年間の70歳以上における年齢別人口の推移を示す。

死亡数の推移と同様に、一貫して増加傾向が見られており、とりわけ、90歳以上の超高齢者において急激に増加が見られた。これより、超過死亡の原因を検討するに当たっては、絶対数の変化に加えて、死亡率、すなわち単位人口あたりの死亡数についても検討する必要があると考えられた。

図5 過去10年間における年齢群別人口の推移

そこで、図6には、死亡率、すなわち、各年齢群における人口10万人あたりの死亡数の変化を示す。絶対数の変化とは異なり、100歳以上を除いて全年齢群において2019年までは、死亡率は減少傾向を示した。2020年には全年齢において死亡率の急激な減少が見られたが、2021年以降には2020年の反動だけでは説明できない急激な死亡率の増加が見られた。

図6 年齢別の人口10万人あたりの死亡数の推移

今回、各年齢群における超過死亡を検討することで新たな視点が得られた。わが国における超過死亡のほとんどは70歳以上の高齢者によるものであり、全体では20万人の超過死亡が見られた2022年においても、60歳未満では、過少死亡かあってもわずかの超過死亡が見られたのみであった。

過去10年間、わが国では高齢者も含めて、死亡率、すなわち人口10万人あたり死亡数は減少傾向である。しかし、高齢人口が激増したことにより、死者の絶対数は増加した。高齢者における超過死亡の増加は、高齢者人口の増加によるところが大きい。新型コロナの流行が始まった2020年からはトレンドが変わり、2020年には死亡率はそれまでの減少傾向からは並外れて減少しており、一方、2021年からは激増している。

超過死亡の原因として、新型コロナの流行による医療の逼迫や高齢者の外出制限が挙げられているが、流行が始まった2020年には超高齢者を含めて死亡率は激減しており、これらが原因であるとは考えにくい。2021年以降に見られた死亡率の激増を考慮すれば、2021年から開始されたワクチン接種が引き金となった可能性は否定できない。