黒坂岳央です。
Job総研が実施した「2023年 週休3日制の意識調査」によると、週休3日制に対して「労働条件が同じなら9割が賛成」と回答している。その理由の多くを占めるのは「プライベートが充実するから」というものである。だが収入源となると70%以上が反対に転じる。
海外でも週休3日制について同様の動きが見られる。2022年5月、世界経済フォーラム年次総会で、マンパワー・グループの会長兼CEOであるヨナス・プライジング氏は「週5日9時から17時まで働くスタイルは古い」と主張している。Reed発表のA four-day work week: the pros and consでも週4日働く(つまり週休3日制)についてメリット、デメリットの両面で議論されている。
週休3日制は日本でうまくいくのか?SNSでも賛否わかれており「ただでさえ労働者不足で、世界トップレベルに休日が多い日本でこれを導入するとさらに社会は混乱する」といった現実的な声も見られた。これについて持論を展開したい。

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まず切り分けるべきは、「うまくいく業種といかない業種」にわけて議論する必要がある。下記は「給与面などの労働条件に変更がない場合」として考えたい。間違っても十把一絡げに「すべての労働者に週休3日制を提供し、ワーク・ライフ・バランスの充実を与えよ!」というのは現実的ではないと感じる。
週休3日制がうまくいく業種は労働集約的ではなく、頭脳集約型かつ付加価値の高いサービス業がこれにあたるだろう。たとえばITの開発やデザイン、クリエイティブ業などはその筆頭である。
こうした仕事は「いたずらに労働時間を引き延ばせば、いいものが作れる」というわけではなく、短時間でも集中して付加価値の高いものを作ることが正義となる。例を出せば疲れた頭で8時間考えて凡庸な企画を作るより、フレッシュな頭で15分考えて出す優れた企画の方が付加価値が高いということが起こり得る。
この場合は基本給に加えて、付加価値に対してボーナスを付加するなど複合的な給与体系の構築がうまくいくかもしれない(ただし合理的で納得感の高い評価基準の作成が極めて難しいのだが)。高い付加価値を出すために、限られた時間で労働生産性を高めようという意欲が生まれるだろう。余暇時間の活動が新たな仕事のアイデアに結びつくなど、公私時間が互いのシナジー効果を生み出す可能性もある。
その一方で労働集約的の仕事は難しい。たとえば流れ作業や同じルーチンワークなどがこれにあたる。
筆者は昔、コールセンターで働いていたが、たとえばこの仕事は極めて労働集約的である。1時間当たりで対応するべきコース数は予め明示されており、努力すれば達成できるがダラダラ過ごせば目標は未達になる。これが週休3日制になるなら、よほど特殊能力がない限り、ほとんどの従業員は目標を達成できないことになる。
こうなると企業の採用側は時間あたりの人的コストが跳ね上がることになるため、経営者は週休3日制の導入に及び腰になる上、長期的にはAIやロボットの導入が視野に入ってくる。相対的に人的コストが高くなるなら、ロボットの導入が合理的な選択になり得るからだ。