記事の見出し、タイトルは重要だ。コラムニストの一人としてそれを痛感してきた。一人でも多くの読者に読んでもらうためには、コラムの内容だけではなく、タイトルも読者の関心を呼ぶものでなければならない。

ダム決壊で水浸したウクライナ南部へルソン州地域の様子(バチカンニュース2023年6月9日から)
バチカンニュースの9日付の記事(独語版)を読んでいた時、強く心打たれる見出しを見つけた。「Ukraine; Unten die Flut,Oben die Raketen」(ウクライナ・地上は洪水、上からはミサイル)というタイトルだ。現地で救援活動するポーランド出身のピーター・ロソチャツキ神父とのバチカン放送のインタビュー記事だ。
ウクライナ南部へルソン州で今月6日未明、ドニプロ川に設置されたカホフカ水力発電所のダムが破壊され、決壊した。大量の水がダムから周辺の地域に流れ出し、住民が避難しているが、依然、状況は危機的だ。
住居は水に没し、命からがら避難する住民の姿が報じられていた。ダムの決壊、それに伴う大量の放水に直面した住民の多くは「あっという間の事だった」と語っている。ダム周辺の住民はボートなどで移動する以外には避難できない状況が続いている。
そしてダム決壊の翌日もロシア軍のミサイル攻撃が続いた。住民が避難中に、ロシア軍は攻撃を継続しているのだ。救援活動をするボランティアに向けても発砲するという(ロソチャツキ神父の証言)。
ゼレンスキー大統領は慣例のビデオ演説の中で、「住民が命がけで避難している時、ロシア軍は洪水で水浸しとなった地域にミサイル攻撃を加えている。これほどの悪はない」と激しい怒りを爆発し、ロシア軍の非人道的な戦争犯罪を糾弾していた。
バチカンニュースの「地上は洪水、上からはミサイル」という見出しを見た時、ゼレンスキー大統領の怒りを思い出すと共に、ダム周辺の住民の嘆きと叫びが直に伝わってきたのだ。
ここにきてダム決壊がダムの欠損から発生したのではなく、人為的な爆発で発生したという説が有力となってきた。実際、ノルウェーの地震観測所など2、3の観測所が爆発をキャッチしている。このコラム欄でも報道したが、ドニプロ川沿いで水力発電所を運営する国営企業ウクルハイドロエネルゴ関係者は、「発電所の修復は不可能だ。タービン室が内側から爆破され完全に破壊されたためだ」と証言しているのだ(「『ダム破壊』が戦争の武器となる時」2023年6月9日参考)。