6月9日のバチカンニュースに「聖地・平和を実現するためには外部からの仲介が必要」という見出しの記事が報じられていた。同記事には、2014年6月8日、バチカンが主催で開催されたエルサレムの平和実現のための祈祷会にフランシスコ教皇、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバス議長、イスラエルのシモン・ペレス大統領(当時)、そしてコンスタンティノープル総主教ヴァルソロメオス1世が一堂に結集した時の写真が掲載されていた。

2014年にバチカンで開催された「聖地の平和」実現のための祈祷会に参加した関係者(2023年6月9日、バチカンニュースから)

サウジのファイサル・ビン・ファルハーン・アル・サウド外相(右)とイランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相(左)、中央は会談を調停する中国の秦剛外相、中国政府公式サイトから、2023年4月6日、北京で(写真新華社)
あれから9年の年月が経過した。イスラエルとパレスチナ間では依然紛争が続き、平和とはほど遠い。エルサレムはユダヤ教、イスラム教、そしてキリスト教の3大一神教宗教の聖地だ。その聖地の帰属権をめぐり紛争が続いてきた。紛争が激化する度に、停戦を求める声が外部から高まった。そしてバチカン、米国、欧州諸国から紛争停止を願う仲介の動きが出てきた。「パレスチナ問題」はそのようなサイクルをこれまで繰り返してきた。
しかし、今回は少し違うのだ。中東の仲介者の常連を演じてきた米国のプレゼンスが見られず、米国と覇権争いを展開中の中国がその役割を演じている。中国は共産党政権が君臨する全体主義国だ。その中国が中東に触手を伸ばし、アラブ・イスラム教国の紛争の仲介役を買って出てきた。更に、驚くべきことは、単に掛け声ではなく、歴史的に宿敵同士のサウジアラビアとイラン両国が中国の仲介を受けて協調する姿勢を見せてきているのだ。