「低金利」が生み出す問題商品は「シンプル・イズ・ベスト」で避ける
金融機関は金融庁には逆らえないため、これまでのような仕組債の販売はなくなるだろう。とはいえ、同様の金融商品が手を変え品を変え、現れ続けることは避けられない。
問題の大本は、日本の長く続く低金利が金融機関と顧客の双方にとって、高金利商品が魅力的に映る環境をつくり上げていることだ。将来不安と手元に現金をともに抱える高齢者や余裕のある消費者は、ほぼ0%の銀行預金に飽き足らず、高金利の運用先を求めている。そして、低金利環境で貸出収入や投資利益の伸び悩みに苦しむ金融機関は、手数料を大きく取れる高金利商品の開発・販売に傾斜する。
この状況が変わらない限り、似たようなトラブルがなくなることはあり得ないだろう。結局のところ、知識を身に着けて自衛するしかないわけだ。金融リテラシーという言葉がよく聞かれる昨今だが、実はそう難しい話ではない。まず、販売員の言うことをうのみにしないこと。むしろ対面の販売員からは購入しないと決めて、自分が調べるきっかけを得るツールとして話半分で聞くくらいでちょうど良い。興味を引く話が聞けたら家に帰って自分で調べて、納得できたら手数料が節約できるネット証券などで購入するといい。何も大損するリスクを我慢して、金融機関に儲けさせる必要はないのだ。
金融商品を検討する際に大事なのは、理解できないものは投資しないこと。利益と損失のそれぞれが発生する状況を理解できないものに、お金を託してはいけない。
そしてもう1つ、理解できたとしても仕組みが複雑な商品は購入しないこと。商品の説明書である目論見書に、「デリバティブ」「金融派生商品」という文言があったら一発アウトだ。投資家が得る利益(仕組債なら債券の金利)と、投資対象の特性(仕組債なら特定の株式の値動き)が一致していない商品は、避けるに越したことはない。仕組みが込み入れば込み入るほど、ひと手間ごとに金融機関は手数料を取っている。
たとえば株なら株価と配当が値動きや収入の出所であり、株式に投資する投資信託でも原理は同じこと。投資でも「シンプル・イズ・ベスト」の考え方を大事に、単純・低手数料の金融商品に絞って投資しよう。
(文=日野秀規/個人投資ジャーナリスト)
日野秀規/フリーライター、個人投資ジャーナリスト
社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行っている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
Twitter:@kujiraya_fp
提供元・Business Journal
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