ジャッドのアドバイスまで結果が出なかったホンダの復活劇

1981年の栄光から快進撃へ!決死のヨーロッパF2・ホンダの軌跡とラルト RH-6-84【推し車】
F2用のRA260E系エンジンは、ターボチャージャー装着&1.5リッター化で初期の第2期ホンダF1用R163Eエンジンのベースにもなった(画像=『MOBY』より 引用)

1978年、年頭の記者会見でホンダはレース活動の再開を宣言し、まず2輪で1979年に世界GPへ復帰すると、翌年にはトーラナック率いる「ラルト」のワークスチームへエンジンを供給するエンジンコンストラクターとして、ヨーロッパF2選手権へ参戦します。

それに先立ち、1973年に本田 博俊氏(ホンダ創業者・本田 宗一郎の長男)がホンダ系のレース会社「無限」(現・M-TEC)を設立、そこへ1960年代のホンダF1、F2に関わった川本 信彦氏の斡旋で若手の市田 勝己氏が出向し、エンジンの図面を描いていました。

1978年に正式なプロジェクトへ昇格、F2用エンジン「RA260E」が完成、BMWやハートの2リッター直4エンジン全盛期だったヨーロッパF2に1980年から参戦しますが、若手時代のナイジェル・マンセルなどを起用したラルト ホンダRH6-80の成績はパッとしません。

川本氏と市田氏の作ったRA260Eは頑丈で壊れず、パワーも出ていましたが、これはどうしたものかと悩んだ後で川本氏が「他の血も入れよう」とラルトのトーラナックへ相談、ブラバムのコネもあったのか、ジャッドへアドバイスを求めました。

するとジョン・ジャッド氏らジャッドのエンジニアはいきなりRA260Eのシリンダーヘッドに穴を開けて加工を始め、唖然としている市田氏らが見ている前でベンチにかけるとパワーダウン、しかしいざマシンへ載せて走るとドライバーからは「素晴らしい」と大絶賛です。

要するにRA260Eはピークパワーこそ優れていたものの、肝心のドライバビリティに欠けていた「カタログスペックだけで実際の戦闘力がない、理屈優先エンジン」だったらしく、それを見た川本氏や市田氏らは、エンジンを全面的にやり直しました。

1981年の勝利と1983年からの快進撃、そしてF2の終焉

1981年の栄光から快進撃へ!決死のヨーロッパF2・ホンダの軌跡とラルト RH-6-84【推し車】
ツインリンクもてぎで開催される「Honda Racing THANKS DAY」で動態保存された勇姿を魅せるラルトRH6-84(2006年)(画像=『MOBY』より 引用)

全面的な設計変更、特にヘッドカバーや燃焼室の形状を見直したRA261Eを積むラルト ホンダRH6-81は1981年開幕戦でマイク・サックウェルのドライブでホンダのF2復帰初勝利を挙げると、ジェフ・リースが第7戦から3勝する大活躍。

1982年にはホンダの出資で、後のF1復帰チームでもある「スピリット・レーシング」を設立、ジャッドの助力でラルトに続く2チーム供給体制(日本からもマーチ ホンダ822でスポット参戦)になり、スピリットのティエリー・ブーツェン(後にF1でも活躍)が3勝。

1983年にはスピリットのF1進出で再びラルト単独供給となり、ラルトRH6-83でジョナサン・パーマーとマイク・サップウェルがドライバーズランキング1-2を決めます。

1984年にはパーマーに代わってロベルト・モレノ(後にF1でも活躍)が加入、サップェルとともに1983年後半から、RH6-84に切り替わった1984年前半まで通算で12連勝、1984年だけでも9勝をあげ、文句なしの「F2最強エンジンコンストラクター」となりました。

しかし、その頃のF2はF3→F2→F1というステップアップのレールから外れ始めており、F3からF2を飛ばしてF1参戦にいたるドライバーが出てきたことや、「F3のようにF1の前座でやるほど軽くは扱えず、さりとて単独開催ではF1ほど集客できない」という状況。

メーカー、観客、主催者とあらゆる面で魅力を失いつつあり、BMWが1984年限りで撤退すると、一般チームへのエンジン市販をしていなかったホンダだけではF2が成立しなくなります。

その結果、F2は1984年で一旦終了(2009-2012年、そして2017年以降にFIA F2選手権として復活)、3リッターF1エンジンの傑作「フォード・コスワースDFV」を再利用できる国際F3000選手権へ移行。

ホンダも1986年からジャッドと共同開発した3リッターV8エンジン「MF308」で国際F3000のエンジンコンストラクターとなりました。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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