インタビューを受けたウクライナの女性たちは、極貧であると言われる他国からの難民と区別し、「自分たちは貧しい人間ではないこと、興味深い職業や私生活の計画を持っていたこと、または戦争が起きなかったら休暇でオーストリアに来ることを計画していたこと」などを強調するという。
ウクライナでは2014年以来、国民のEU意識が高まっていった。そしてロシアの侵略戦争はヨーロッパ戦争、つまり、ウクライナを防衛しているEUの外部国境でヨーロッパの価値観を攻撃する戦争という意識が強い。
彼女らはインタビューでは、特にイスラム教徒の出身国からの難民を「異なった存在」で「貧しい」と受け取っていることを明らかにしている。一方、ウクライナは物質的にも社会的地位も良く、オーストリアとの歴史的および政治的な近さがあると強調する。
オーストリアはウクライナ出身者の地位に関する法的および社会的規制に基づき、彼らを「難民」とは呼ばず、「避難民」という公式用語を使用するとともに、潜在的な労働者として考えている。だから、ウクライナ人自身も自身を“避難民”と感じるようになるわけだ。
調査報告は「避難民のほとんどは、居住するためではなく、一時的な避難所を見つけるためにオーストリアに来たのだから、彼らが生活しやすいようにサポート、ケアする必要がある。同時に、一時保護令は、労働市場への即時アクセスに非常に有利な枠組みだ。避難民の教育レベルが高いことを考えると、統合政策の取り組みは、必要な言語スキルを迅速に教え、ウクライナで実践した仕事や活動をオーストリアでも継続できるように支援する必要がある」という。ただし、「ウクライナからの避難民が労働のためではなく、難民のために移住していることを見過ごしてはならない。子どもたちの日常生活における保護とサポート、住居、教育施設へのアクセスが最優先事項」と指摘することも忘れていない。
オーストリアは冷戦時代、東西両欧州に接する地理的な位置にあることから、ソ連・東欧共産圏から200万人余りの難民を収容してきた。2014年には中東・北アフリカから100万人の難民が欧州に殺到した。そして今年、これまで7万人余りのウクライナ人がオーストリアに避難してきたわけだ。
冷戦時代の難民の多くは政治亡命者であり、14年の難民は経済難民と見なされてきた。そして今年ウクライナから一時的居住を願う避難民が収容されているわけだ。
なお、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、今年2月24日以来、ウクライナから780万人以上が国外に避難し、640万人の国民が国内避難民となっているという。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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