今国会も会期末まで残すところ2週間を切り、憲法審査会もあと2回となりました。今回は憲法改正の国民投票で広報を担う国民投票広報協議会の役割と、現在は法定されていないネットでの広報について、具体的な検討に着手すべきと提案しました。
特にネット空間でのフェイクニュースや偽情報については、EUの「偽情報に関する行動規範」や我が国の「プラットフォーム透明化法」などを参考に、規制の大枠を法律で定めつつ、詳細を事業者の自主的取組に委ねる「共同規制」を提案しています。
憲法改正だけにとどまらない課題かもしれませんが、憲法改正を発端として議論を深めていきたいと思います。

衆議院インターネット審議中継より
【協議会によるインターネットを利用した広報・広告】
現在の憲法改正手続法には、インターネットを利用して行う国民投票広報協議会による広報についての規定や、協議会の費用で行う政党のインターネット広告についての明文規定がありません。インターネットがこれだけ影響力のあるメディアになっている以上、協議会がインターネットを利用した広報や、禁止期間における政党等の広告を行うための法整備が必要と考えます。
協議会がインターネットを利用した広報・広告に関して何がどこまでできるのか明らかにしないまま、政党等の広告を禁止してしまうと過度な規制になり、国民は正確な情報に接する機会を失い、政党等の広告の禁止期間中、フェイクニュースにばかりに晒されることにもなりかねません。
【協議会のファクトチェック機能】
さらに、テレビ広告と異なり、個人がSNS等で発信する意見については規制は困難だと考えます。そして、個人の発信を制限できない以上、膨大なフェイクニュース情報の発信が予想され、そうしたフェイクニュースの嵐に対して協議会の発信だけで対抗できるのかといった検証も必要です。
例えば、「国民民主党の緊急事態条項はナチス時代の緊急事態条項と同じだ」と言ったフェイクニュースが流布した場合に、それを防止したり停止するために、どのような有効な対抗策があるのでしょうか。協議会から正しい情報を大量に出すようなカウンター攻撃も一案ですが、同時に、協議会に何らかにファクトチェック機能(民間機関との連携を含む)や、是正措置の権能を持たせることも検討すべきです。
例えば、フランスには、「ヴィギヌム」という政府組織が2021年7月に創設され、外国勢力を含むプラットフォーム上の虚偽または敵対的なコンテンツの伝播を監視し検出する役割を果たしています。ただし、この機関は国民投票の公正性の確保のためだけの組織ではなく、広く外国からの偽情報等によるデジタル干渉に対抗する機関であり、国家安全保障部局の一部に位置付けられています。