より安全とされるレンチウイルスベクターによる遺伝子治療を受けた67人の副腎皮質ジストロフィーの患者からも3人に骨髄異形成症候群が発症した。

表 遺伝子治療にともなう白血病発生のリスク

現在コロナワクチンについて、研究者の間で最も関心を集めているのは、コロナワクチンへのプラズミドDNAの混入の疑いである。mRNAとは異なり、DNAはヒトの遺伝子に組み込まれる可能性がある。mRNAワクチンの製造工程ではプラズミドが原料となるが、最終工程でプラズミドを除去することが必要で、その混入は基準値以下でなくてはならない。

ファイザー社およびモデルナ社のワクチンサンプルを次世代シークエンサーで遺伝子解析を行ったところ、欧州医薬品庁(EMA)の基準値を上回るプラズミドの混入が見られた。とりわけ、ファイザーのmRNAワクチンから、DNA腫瘍ウイルスのプロモーター配列が見つかったが、この配列はヒトゲノムに取り込まれると近傍遺伝子の転写活性を高める働きがある。

もし、がん遺伝子の上流に組み込まれると、がん遺伝子を活性化して発がんリスクが高まる。これまで、遺伝子治療後の発がんは血液細胞に限られており、今回、エストロゲン受容体が関係する婦人科系腫瘍と並んで、白血病の増加が見られたのは気になるところである。遺伝子治療後の白血病の発症時期が、0.5〜14年後の広範囲であることから、今後も長期間の観察が必要である。

今回の検討では、思いの外ワクチン接種後の早期から、一部のがんによる死亡数の増加が観察された。乳がん、子宮がんの増加は、今回の結果が得られる以前から懸念されていたことである。とりわけ、エストロゲン受容体の発現が見られる婦人科系腫瘍の既往歴がある場合には、スパイクタンパクが血液中に持続的に検出される場合には再発リスクが高まる可能性がある。エストロゲン受容体拮抗薬が再発リスクを軽減できるかを検討することも考慮する必要がある。