アインシュタインに過ちを気づかせる
この頃のアインシュタインは宇宙は定常的で恒久的に存在しているという「定常宇宙論」を前提としていたため、フリードマンとそれに続くこのルメートルの「膨張宇宙論」を嫌悪していたといわれている。
ルメートルの膨張宇宙論についてアンシュタインは「あなたの計算は正しいが、あなたの物理学は忌まわしいものだ」と拒絶していたことが記録に残されている。
ルメートルの論文は発表当初はあまり注目されていなかったのだが、イギリス時代の恩師であるエディントンがルメートルの論文を読み、1931年に王立天文学協会の月刊誌に英語の解説論文を掲載したことで、多くの目に触れて物議を醸すことになった。そして最終的にルメートルの膨張宇宙論の計算は正しいことが大勢に認められた。
勢いを得たルメートルは1931年に「Nature」誌で発表した論文で「原始的原子の仮説(hypothesis of the primeval atom)」を提案した。これは宇宙が特異点から始まったというビッグバン理論の元となるアイデアである。
アインシュタインにとって“忌まわしい”ルメートルの理論であったが、これがきっかけで自分が犯していた定常宇宙論という“生涯で最大の過ち”を認めることになる。
ルメートルは1933年に一連の会議に出席するためアメリカにしばらく滞在したのだが、あるセミナーの席でルメートルが原始的原子について詳しく説明したところ、アインシュタインは立ち上がって拍手をし「この理論は私が今までに聞いた中で最も美しく納得の行く説明です」と称賛したことが記録に残されている。

「現代物理学の父」や「20世紀最高の物理学者」とも評される偉人、アインシュタインの考えを改めさせたルメートルの功績がなければ、宇宙物理学の進展は今頃は何周も遅れたものになっていたかもしれない。
ルメートルは、原始の原子の誕生もいつかは科学的に説明できる可能性を決して排除せず、その答えは量子力学を宇宙全体に適用することで得られるかもしれないと言及している。そしてこの考えは数十年後、エドワード・トライオンやスティーブン・ホーキング博士らに受け継がれることになった。これまであまり知られてこなかったジョルジュ・ルメートルの偉大な業績は確かにもっと評価されてよいのだろう。
参考:「Big Think」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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