私の地元において、公明党の主な支持団体である創価学会の会員さんが、政治を評するにあたり、「政教分離は当然の前提だが、自分の信仰の理念や信条を判断の基礎として正しいことは正しい、間違っていることは間違っていると考えるのだ」と述べておられたことをよく覚えています。

政党にとって支持層の意向は重要であり、今回の問題を単なる打算や利害得失のみによるものと捉えると、大きな誤りを犯してしまうのではないでしょうか。与党間のみならず、政党間にあって、互いがリスペクトの念を持つことは重要です。憎悪と分断をあえて煽るような政治があってはなりません。報道にもそのような傾向が散見されますが、皮相的で安直な見方は慎むべきです。

昨日、超党派の議員による「石橋湛山研究会」が発足し、湛山の経済論評の英訳を進めておられるアメリカ人実業家・リチャード・ダイク氏の記念講演を拝聴しました。同氏は毎朝5時から8時までを湛山の論評を読むことに費やすと言っておられ、全集を揃えながらほとんど読んでいない自分を大いに恥じたことでした。

石橋内閣はわずか65日の短命政権でしたが、保坂正康氏は石橋政権を「最短の在任、最大の業績」と評しておられます(「石橋湛山の65日」東洋経済新報社刊・2021年)。日米・日露・日中関係が新たな局面を迎え、政党政治や民主主義が問い直されている今、「保守主義の本質は思想ではなく寛容である」と説き、「小日本主義」を唱えた気骨のリベラリスト、石橋湛山に学ぶべきことは多いと思います。

総理大臣公邸における「身内の忘年会」について批判がありますが、この上ない激務に追われる総理が公邸で気のおけないご家族と少しでも団らんできる時間をつくること自体はむしろ必要なことです。セキュリティの確保を前提として、総理大臣が心身ともに良好なコンディションで活動できる環境を整えることは国益に資するものと考えます。

議員宿舎に住まう我々も含め、留意しなければならないのは、納税者の税金で運営されている場所に居住する以上、納税者に疑念や不快な思いを抱かせることがないようにすることです。

むしろ問題は、このような身内のみのはずの画像が外部に流出した事実にこそあります。誰がどのようにしてこれを週刊誌に流したのかは知る由もありませんが、その経緯は危機管理の意識の観点からよく検証されなくてはなりません。

101年の歴史を持つ「週刊朝日」が6月9日号をもって休刊(事実上の廃刊?)となりました。私が育った鳥取の家では何故か週刊朝日を定期購読しており、同じく定期購読していた月刊誌「文藝春秋」「諸君!」「正論」などと併読しながら、世の中には様々な見方があると思ったものでした。

週刊読売、サンデー毎日、週刊サンケイと、かつて新聞社はすべて週刊誌を発行していたのですが、残るはサンデー毎日だけになってしまいました。数々の思い出のある週刊朝日の休刊を惜しむとともに、活字文化がこれ以上衰退しないことを切に願います。

都心は台風の接近で、荒れ模様の週末となりました。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2023年6月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。