もし研究結果が正しければノーベル賞級の発見となるのは間違いありません。
米国のフロリダ大学(UF)で行われた研究によって、宇宙に分布する銀河の3次元的な分布に、明確な非対称性があることが示され「宇宙には鏡像関係にある2つのうち好みの向きが存在する」ことが示されました。
この好みの方向は宇宙が指数関数的に急拡大する「インフレーション」の時期に未知の物理法則によって刻み込まれ、銀河分布パターンの非対称性へとつながったと考えられます。
研究者たちは、誕生直後の宇宙に好みの向きが出現した理由を理解できれば、なぜ現在の宇宙は反物質よりも物質が多いかといった、より根本的な非対称性の謎を解明できると述べています。
しかし誕生直後の火の玉だった宇宙に、いったいどんな力が作用して非対称性が発生したのでしょうか?
研究内容の詳細は2023年5月22日と同年5月19日に『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』および『Physical Review Letters』に掲載されました。
「宇宙には好みの向きがある」銀河の分布に非対称性を検出
私たち人間や地球、太陽や銀河を含むあらゆる存在は「物質」から構成されています。
しかし宇宙論では、宇宙誕生直後は物質と反対の性質を持つ「反物質」が同じ量だけ生成されていたことが示されています。
物質と反物質は衝突すると対消滅を起こして消滅してしまうことが知られていますが、どういうわけか反物質だけが消え去り、現在の宇宙は物質を中心とした天体によって構成されています。
このような対称性の破れがなぜ起きたのかは、現在の物理学において最も重要な謎の1つになっています。
もしタイムマシンがあれば、誕生直後の宇宙を観察して物質だけが生き残った理由を探ることもできかもしれません。
残念なことにタイムマシンは存在しないため、何があったかを直接確かめることはできません。
しかし、宇宙がなぜ非対称になったかを間接的に探る方法は残されています。
宇宙はかつて超高密度超高温の小さな点だったものが急激に膨張して作られました。
そのためもし宇宙が小さかった頃に対称性を破る変化が起きていれば、その痕跡は現在の銀河分布にも残っている可能性がありました。
そこで今回フロリダ大学らの研究者たちは既に位置が判明している100万個の銀河の分布を調べ、現在の宇宙に非対称性の影響が残っているかを調べることにしました。