EUのヨハネス・ハーン欧州委員(予算・総務担当)は、「ハンガリーへの支払いは同国の法の原則の確立にかかっている。ハンガリーはまた、ここ数カ月間、ウクライナ支援などEUの主要な決定を繰り返し阻止してきた」と指摘した。欧州議会の今回の決議は、ハンガリーのEU議長国就任は適正に欠けているというわけだ。議長国は本来、「EU立法に関する理事会の取り組みを前進させ、EUの議題の継続性を確保し、他のEU機関との関係において理事会を代表しなければならない」からだ。

欧州議会(定数705議席)では来年6月6日から9日、議会選挙が加盟国で実施される。選挙結果を受け、新しい欧州議会が構成されるが、その重要な選挙終了直後にハンガリーが議長国に就任する。欧州議会は選挙後、次期委員会の選挙で重要な役割を果たすから、24年下半期の議長国は政治的な影響力を行使できる可能性が他の時期の議長国より大きいこともあって、加盟国では懸念の声が出ているわけだ。

問題は、EU条約には、議長国の資格はく奪について何も記述していないことだ。ちなみに、来年上半期はベルギーが続き、その後にハンガリーが議長国となるが、ハンガリーの後には、ポーランドが議長国に就任する。ポーランドはEUのブリュッセル(本部)にとってハンガリーと同様、問題国と見なされているのだ。

EU条約には「理事会議長職が均等な交代制に従って交代する」ことが明確に規定されている。そのため、加盟国の議長国の資格をはく奪することは条約上難しいうえ、EUの結束を破壊する恐れが出てくる。

インスブルック大学の欧州法、国際法、国際関係学のウォルター・オブウェクサー教授(Walter Obwexer)はオーストリア国営放送(ORF)のインタビューの中で、「欧州議会の決議案は政治的には重要かもしれないが、法的には価値が小さい。欧州議会は基本的に理事会の議長職問題に介入できない。欧州理事会はハンガリーやポーランドによるEUの価値観の深刻かつ持続的な違反を認定する決定を採択していないから、現時点では理事会議長の職を停止することはできない」という。

欧州議会が来年下半期の議長国の適正問題を現時点で議論する背後には、EUのウクライナ支援問題が絡んでくるからだ。ハンガリーはEUのウクライナへの財政支援に度々反対してきた。EUでは重要案件の採決では加盟国の全会一致が原則だ。ハンガリーが反対する限り、EUはウクライナに財政支援が出来なくなる。ハンガリーの議長国の資格有無論争はEUの政治メカニズムの見直しを強いる問題に発展する可能性がある。

以上、ORFの関連記事を参考にまとめた。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年6月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。