ハンガリーは2024年7月1日、欧州連合(EU)の議長国に就任する。任期は半年間だ。欧州議会は1日、ハンガリーのEU議長国に反対する決議案(全619票)を賛成442票、反対144票、棄権33票の賛成多数で採択した。同決議案は法的拘束力はないが、「象徴的な意味合いがある」というのだ。

欧州議会での全体会合の採決風景(欧州議会公式サイトから)

EUは27カ国加盟国から構成されている。半年ごとに議長国が変わる。2023年上半期はスウェーデン、同年下半期はスペイン、そして来年上半期はベルギーで、その次の半年はハンガリーが議長国となるが、欧州議会は「ハンガリーはEUの基本法第7条、法の遵守に違反している」として、同国の議長国就任の適正に疑いを提示したわけだ。ちなみに、EU加盟国がEUの基本原則としての基本権保護に対する重大な違反を犯す時、EU理事会は同国に対し、制裁を発動することができる(EU条約第7条)。

議長国の資格論争の話を聞くと、ロシアが今年4月1日、国連安全保障理事会議長国に就任した時をどうしても思い出してしまう。安保理議長国は15カ国メンバーの輪番制で、アルファベット順に毎月交代する。安保理事会は5カ国(米英仏露中)の常任理事国と10カ国の非常任理事国から構成されている。4月の議長国はロシアだった。議長国として、ロシアは理事会の決定にほとんど影響を与えることはできないが、議題を設定し、会合の進行役を務める。ウクライナを軍事侵略しているロシアが国連最高意思決定機関の安保理の議長国に就任し、ウクライナ戦争などの国際問題を主導することに対し、ウクライナのクレバ外相は「悪い冗談だろう」と語ったほどだ(「露の安保理議長国就任は『冗談』か」2023年4月5日参考)。

欧州議会には7会派が存在するが、そのうち欧州人民党(EPP)、社会民主党(S&D)、自由党(再生欧州)、緑の党、左派の過半数は決議案に賛成票を投じた。彼らは、ハンガリーの「法の支配」に関する問題が十分に進展していないと判断し、基本権利の侵害に対する現在進行中の第7条の手続きを継続することを要求している。

EUは現在、ハンガリー向けに割り当てられた約300億ユーロのEU資金をブロックしているが、これには新型コロナウイルス復興基金からの援助と優先融資の120億ユーロが含まれる。EUは「ハンガリーの司法機関と監督機関はEU資金を正しく運営することを保証する十分な独立性を持っていない」と受け取っている。