チャート:離職者数、解雇者数は大幅減がリードしマイナスに
(作成:My Big Apple NY)
ーー米4月雇用動態調査が市場予想より堅調な内容だったため、ドル円はNY時間午前9時過ぎに140円台を回復しましたが、その後失速。6月FOMCの利上げ織り込み度は67.5%へ上昇しつつ、年内の金融政策は6月FOMCでの利上げを経てFF金利誘導目標を5.25~5.5%へ引き上げた後、9月まで据え置き、11月の利下げ転換、12月の追加利下げの予想に傾いたためでしょう。年内利下げ見通しが前週末の1回から2回に変わったのは、離職者数の減少や、市場予想を上回ったはいえ6カ月ぶりの低水準だった米5月消費者信頼感指数が影響しつつあるようです。また、米債務上限問題の妥結案をめぐり。上下院の共和党保守強硬派や民主党プログレッシブが難色を示していることも、重石となっている可能性があります。妥結がスムーズに進まなければ、格下げに直面しかねません。
チャート:年内の金融政策見通し、2回の利下げ予想にシフト
(作成:My Big Apple NY)
さて、下院では本日、米債務上限問題の妥結案”財政責任法案”の採決を予定します。下院の議席数は共和党222、民主党213で、共和党は造反を4人までに止めなければいけません。そこで、下院の状況を振り返ってみると、反対票を投じると表明済みの議員はフリーダム・コーカスから15名が不支持を表明済みで。その他、ナンシー・メイス議員(サウスカロライナ)やウエズリー・ハント議員(テキサス)など下院議長選でマッカーシー氏に投票した議員も合わせると30人近くにのぼり、数字の上では 否決しかねない雲行きです。加えて、民主党のプログレッシブ(急進左派)の代表格、オカシオーコルテス議員(NY)を始め、気候変動対策のタカ派議員など、数名が反対の声を挙げています。
下院で可決しても、上院に障害がないわけではありません。上院の議席数のうち民主党が51、共和党が49のところ、上院独特の手続き上の動議を用い、最後の一押しで自身が推進する案を盛り込もうとする可能性があります。リンジー・グラム議員(サウスカロライナ)は国防費引き上げ、マイク・リー議員(ユタ)は一段の債務削減を主張。民主党からはティム・ケイン議員(バージニア州)が”マウンテン・バレー・パイプライン”の承認撤回を求めています。
米国では遅々として進まない交渉を表し「カブキ」、日本では「プロレス」と呼ばれる米債務上限問題は、果して無事幕を下ろすのか。6月5日とされる米国の債務不履行(デフォルト)Xデーが、刻々と迫ります。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年5月31日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。