しかし、この恩恵を受ける研究者は、経済的に豊かな国や英語圏に多いとのことだ。常識的には、プレステージの高い研究者はこれらの国に多いので当然だと思う。この恩恵や特権は、著者名と審査員名が秘匿されるとなくなるというのは、興味深い。大ボスの論文に厳しい評価をしたことがばれると、自分の身に災いが降りかかってくるので、多くの研究者にとっては自然な行動かもしれない。

米国などの経済的に豊かな国の特定の著者による論文は、裕福でない非英語圏の国の著者による論文よりも、審査員の評価に送られる割合が68%も高かったとのことだ。当然ながら、前者の方が掲載される割合は高い。低所得国または非英語圏の著者は、著者名が明らかかどうかはあまり影響しないとのことだ。最近、ジェンダーバイアスがよく取り上げられるが、これらの比較では男女差はほとんどなかったとのことだ。

個人的には、これらの結果には驚きはなく、感じていたことが淡々と数字で示されたという感想だ。どの世界でも顔が効くのは仕方がないと思うが、実力のある者が実力を評価される社会を取り戻すことが大切だ。

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年5月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。