タワマン否定論の虚妄…騒音トラブル多発・修繕費積立金不足は誇張、多大なメリット
メージ画像。記事内容とは無関係です(「gettyimages」より)(画像=『Business Journal』より 引用)

 2000年代初頭にタワーマンションブームが到来し、早20年以上が経過しようとしている。昨年10月31日に国土交通省が公表した「マンションを取り巻く現状について」によれば、20階以上の超高層マンション、つまりタワーマンションの新築竣工棟数は2000年代に入り増加傾向となり、21年末の累計棟数は全国で約1400棟にものぼる。

 しかし、タワマンに関するリスクやデメリットが強調された否定的な声も目立っている。たとえば、「エレベーターがかなり混雑するので外出が大変」「騒音など隣人トラブルが発生しやすい」など、否定派が指摘するデメリットを挙げればキリがない。ブーム開始から20年が経過するなかで、築年数が二桁になる物件も多くなり、すでに1回目の大規模修繕を終えたところも出てきたため、このタイミングでタワマンブームについて総括的な議論を行うべきではないかと主張する声も多い。そこで今回は、住宅評論家の櫻井幸雄氏にタワマンの評価について現時点での総括を語ってもらった。

騒音、停電、修繕費…誤解しがちなタワマンの特徴

 タワマンに関する評価は、実際に住む人と住む気もない人との間で極端に見解がわかれるという。

「タワマンは駅周辺に建設されていることが多く、買い物や移動が便利となるので、利便性を求める人からすれば選択肢としてはアリなんです。もともとタワマンは都市における駅周辺の限られた土地を有効活用すべく、建設され始めた建物です。したがって多くの人にとってメリットがあるように設計されているので、購入する人・したい人が多いのはある意味自然。対して住むことを検討していない人からすれば、タワマンは高くて人を見下ろしている気に入らない建物として映るでしょう。

 この両者の価値観のぶつかり合いがタワマンをめぐる言説の根底にあるので、タワマンを総括するのであれば避けては通れません。デメリットが目立つとメディアでは騒がれていますが、個人的には一部の意見のみが誇張化されているだけだと感じており、タワマンにもメリットがきちんとあるというのが私の考えです」(同)

 否定派が指摘するデメリットには、間違っているものも多いという。

「たとえばよくいわれているのが、建物全体の重量を軽くする必要があるため、石膏ボードを使用した乾式壁が採用されており、音漏れがひどいという指摘。そこからタワマンでは騒音トラブルが多発しているといわれていますが、乾式壁は鉄筋コンクリートよりも施工費が高く、遮音性を高める工夫が施されているので、よほど酷い騒音を出す住民が隣室に住んでいない限りトラブルは起こりにくいのです。

 また停電が起こるとエレベーターが使えなくなり、外出するには階段を上り降りするしかないといった話もありますが、これも正確ではありません。たいていのタワマンには非常用発電が備わっており、3日から1週間ほどはタワマン内の電力を賄えるのでエレベーターも普通に動きます。

 修繕費積立金の追加費用の請求も、これまで取材した20物件以上で発生していません。もちろんタワマンレベルの物件となると、修繕費用は億単位になるほど高いのですが、タワマンは総戸数500戸以上になる場合がほとんどなので、各世帯が負担する最終的な金額は基本的に普通のマンションと大差ありません。私は40件ほど高層マンションを取材いたしましたが、どの物件も予算内でやりくりできていましたし、複雑な形状で有名で修繕が困難とされていた埼玉県川口市の『エルザタワー55』でも、追加金は発生しませんでした」(同)

 一方、タワマンならではのメリットも多い。

「タワマンは通常の物件よりも建設構法に対する基準が厳しいため、耐震性はかなり高い。大地震が起きると、ほかの物件だけ崩れてタワマンだけが生き残ることが予想されるぐらい頑丈なんです。またタワマンは物件としての資産価値が下がりにくいという要素もあります。多くのタワマンは、駅近くで利便性が高いエリアに建設されているため、基本的に需要は高いですし、売却する場合、比較的、購入時に近い価格で売り出すことができるでしょう。現在、都心部のタワマンは1LDKで1億円前後になることが多いのですが、値崩れはしにくく、むしろ値上がりする可能性が高いといえます」(同)