圧倒的な推進力が魅力だが、一方で劣化が早いのは事実
そんな厚底ランニングシューズだが、ネットでは200kmを走ったあたりから劣化が始まるなど、その寿命の短さが指摘されていた。リーズナブルなモデルでも1万5000円ほどし、3万円ほどする高額なモデルも多い厚底ランニングシューズが、長く使えないのはもったいないようにも思える。
「EVAという素材は樹脂に細かな気泡を入れることで軽量を実現させているのですが、いわばスポンジのような形状。それゆえに長時間圧力を加えていると変形してしまうという欠点があります。家庭用の皿洗いスポンジでイメージするとわかりやすいのですが、ああいうものは使えば使うほど型崩れしていきますよね。
それと同じように、ミッドソール部分が徐々に歪んでシワになってきてしまうのです。走行距離に関しては、もちろん使用している人の体重なども関わるのであくまで目安ですが、確かに200kmくらいから徐々に変化していきます。そこからだいたい500kmくらいが寿命といわれていますね」(同)
ネットで話題になった「200kmで捨てろ」というのは過剰表現かもしれないが、劣化したシューズで走り続けると膝に負担が出てしまうということもあるのだろうか。
「それについては難しいところですね。私は肉体の専門家ではないので詳しいことは言えないのですが、確かにソールのクッション性が低下した状態で走り続けることは、衝撃吸収性を弱めるという意味で膝にダメージを与えるかもしれません。ですが、これは厚底シューズだからというより、どんなランニングシューズでも陥る問題です」(同)
城所氏いわく、厚底ランニングシューズは正しくないフォームで走っていると、劣化していなくても膝に余計な負担をかけてしまう場合もあるという。
「厚底ランニングシューズは、地面を踏みつけるときにかかる上から下にかけてのエネルギーを、クッション性やカーボンプレートの反発力で前方向に押し出すことで、ある種自動的に推進力を得ています。ですが、それがネックになる場合があるのです。というのも、膝に負担がかかるようなねじれた形で足を地面に落とすといった正しくないフォームで走っていたとしても、厚底ランニングシューズは自動的に推進力を与えてくれるので、ぐんぐん走れてしまうのです。
足裏が正しく地面を捉えていればフォーム崩れは起きにくいですが、こうしたシューズは厚底ゆえに足裏の感覚がつかみづらく、自身のフォーム崩れに気づきにくい。そのため正しいフォームで走り続けるという基本が身についていないと、思わぬ怪我につながりかねません」(同)
結論として、こうした厚底ランニングシューズと、どのように付き合っていくのが正解なのか。
「高いお金を払ったのに200kmくらい走ったあたりから劣化してしまうというのは、ランナーではない人からすると“お値段に見合わないのでは?”と思われるかもしれませんね。ただ、ランナーやスニーカー好きの間では、近年登場した厚底ランニングシューズに限った話ではなく、そもそもこうしたシューズがある程度走ると劣化してしまうものであるというのは周知の事実で、それを織り込んだうえの高機能な消耗品として認識していると思います。走ると劣化してしまうから使わない、という考え方は、こうした靴が作られた目的と反するので、ぜひ積極的に履いてその走行性能を味わってほしいですね」(同)
比較的短い寿命という宿命を持っている厚底ランニングシューズ。だが、それを差し引いても余りある納得の高性能で、多くのランナーを魅了しているということなのだろう。
(文=A4studio)
城所匠/「スニーカーアトランダム」マネージャー
スニーカーの修理やカスタム、クリーニングなどのサービスや販売を行っている、全国対応のスニーカー修理専門店「スニーカーアトランダム」に勤務。豊富な知識で、スニーカーを正しく長く使えるようなアドバイスも行っている。
HP: https://sneaker-at-random.com/
提供元・Business Journal
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