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奇抜なようで、プジョーとしては案外オーソドックス?
カタチだけではない、意外な実力派
奇抜なようで、プジョーとしては案外オーソドックス?

前後にモーターを持つ4輪駆動の後輪は極端にトレッドが狭く、ボディ形状はコンピューターシュミレーションによる空力解析結果の最適値をそのまま外形としたようなルックス、一般的なルーフはもちろんフロントガラスもなく、最低限のウインドデフレクターのみ。
EX1を簡単に説明するとこんな「空力スペシャル」ですが、妙に市販車じみたフロントマスクをはじめ、単なる理想を形にしただけのコンセプトカーとは言い切れない、妙なほど現実味を感じさせるクルマで、もっと言えば「新しい」とまでは感じさせません。
それもそのはず、このEX1にはさまざまな、しかも結構以前から存在するコンセプトカーを元ネタとしています。
最初の原型と言えるのが1996年のパリモーターショーへ展示された「アスファルト」で、市販車じみたフロントマスクから、4輪ながら極端にトレッドが狭い後輪へと絞り込まれる台形レイアウトや、ウインドシールドがないコクピットはEX1そのもの。
さらに2005年には後輪をダブルタイヤかと思うほど太い1輪としたスリーホイラーの「20Cup」をフランクルフルトーターショーで発表。
さらに同年のジュネーブショーでは空力デザインを徹底させた「フラックス」を発表し、この3台のコンセプトカーの特徴を全て取り入れたうえで、2010年のジュネーブショーで発表したハイブリッドスポーツコンセプト「SR1」のフロントマスクを合体させました。
EX1はこうした一連のコンセプトカーの延長線上にあり、集大成として空力性能に優れたスーパースポーツEVとして仕上げられ、見たものに「新しい」と「どこか懐かしい」が同居したような、不思議な感覚をもたらします。
市販車としてもっとも実用性に難を感じるのは、ウインドデフレクターのみでウインドスクリーン(フロントガラス)も幌もないところですが、ルノースポール スピダーなど、海外の割り切ったオープンスポーツでは案外珍しくありません。
カタチだけではない、意外な実力派

プジョーEX1が「ある意味、コンセプトカーとしては意外なほど保守的で市販車チックなデザイン」だったのには理由があり、市販車と似たルックスで数々の世界記録へ挑み、プジョーのブランドイメージ向上へ大きく貢献する役割があったからです。
前後のモーターで最高出力340馬力、最大トルク48.9kgf・mに達するパワートレーンと、バッテリーが重いEVとはいえカーボンファイバーなど軽量素材を多用して1t以下へ抑えられたEX1はショーの会場から解放されると、猛烈な加速にモノを言わせました。
最初に大きく取り上げられたのは、2010年12月に中国の四川省成都市にある軍用空港で挑戦したEV加速記録で、1/8マイル(約201m)加速8.89秒など、いくつかのFIA(国際自動車連盟)公認記録と、0-100km/h加速3.49秒などいくつかの非公認記録を樹立。
それもフランス人ドライバーだけではなく、中国人ブロガーのドライブによっても記録を叩き出しており、中国市場における「プジョー」ブランドのイメージアップに大きく貢献する偉業と言われました。
また、翌2011年5月にはドイツのニュルブルクリンクサーキット北コースでタイムアタックを実施、当時のEVによるベストラップ、9分1秒338を叩き出します。
その後、EV関連技術の急速な発展でそれらの記録は次々に塗り替えられていったので、現在の視点から見れば過去の話に過ぎないとはいえ、2010年代のハイパースポーツとしては十分なパフォーマンスを誇る1台だったのです。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
文・兵藤 忠彦/提供元・MOBY
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