自動車産業の世界的な調査会社であるJATO Japan Limitedは、世界の自動車市場についての最新レポートを公開した。

2022年世界新車販売レポート。中国メーカーが世界的な増進。テスラはモデルランキングを上昇
(画像=▲自動車産業のリサーチ会社「JATO」、『CAR and DRIVER』より引用)

JATO Dynamicsのデータによると、2022年の世界の新車販売台数は7,940万台となり、2021年の8,070万台から2%減少。世界販売台数の24%を占める新興国市場(インド、中東、東南アジア、アフリカ)での好調ぶりは、北米、欧州、中国の減少を相殺するほど大きなものであった。

2022年世界新車販売レポート。中国メーカーが世界的な増進。テスラはモデルランキングを上昇
(画像=▲2021年と2022年の世界の新車販売台数 比較、『CAR and DRIVER』より引用)

JATO DynamicsのグローバルアナリストであるFelipe Munozは「この減少は、主に2つの要因がある。まず、北米と欧州ではサプライチェーンの混乱が続き、半導体が不足したため新車の供給が減少し、世界最大の市場である中国では販売が弱まった」と述べている。 2022年、この3地域合計で世界販売台数の69%を占めた。

これらの課題に加え、ウクライナにおける戦争が進行していることも減少の要因となっている。制裁措置の結果、ロシア市場は大きな打撃を受け、販売台数は59%減の約100万台となった。JATO Dynamicの東欧エリアマネージャーであるIrina Dedovaは「ロシアでは、新車販売が大きく停滞し、中古車を販売する輸入業者への依存が増している。欧米ブランドの撤退は、2022年に世界第21位の規模を持つロシアの自動車市場において、中国が存在感を高める機会を創出した」と話している。

2022年世界新車販売レポート。中国メーカーが世界的な増進。テスラはモデルランキングを上昇
(画像=▲インドでの販売は24%増の437万台となり、新記録を達成、『CAR and DRIVER』より引用)

一方、インドでの販売は24%増の437万台となり、新記録を達成している。この結果、インドは日本を抜いて世界第3位の自動車市場となった。しかし、人口1,000人あたりの自動車販売台数は3.1台と、上位25カ国の自動車市場の中で最も低い水準に留まっている。

JATO Dynamics India代表のRavi Bhatiaは「消費意欲は、景気回復や政府の支援策により支えられており、輸出を促進するための今後5年間で総額75億ドルの生産連動型インセンティブや、新車需要を高めるための新しいスクラップ政策の導入などが決定された。また、銀行や金融機関も競争力のある金利で融資を行うことに寛容になっている」と話している。

2022年世界新車販売レポート。中国メーカーが世界的な増進。テスラはモデルランキングを上昇
(画像=▲アラブ、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの新車販売台数は275万台、『CAR and DRIVER』より引用)

金融優遇措置、パンデミック後の対策、給付金などが、中東での需要拡大に貢献した。湾岸協力会議加盟6カ国の新車販売台数は275万台となり、中東地域全体の46%を占めている。JATO Dynamics Middle EastのエリアマネージャーであるSamir Sawalhiは「中東は、世界の自動車産業においてより重要な役割を担うことになりそうだ。世界19位の自動車市場であるサウジアラビアは、電気自動車生産の拠点となることを目指しており、今後10年間で500億ドルの投資が見込まれている」と述べている。

アフリカ市場では、台数が5.5%増の115万台となった。これは、アフリカ大陸の44%を占める最大の市場である南アフリカでの販売台数が14%増加したことが要因である。北アフリカが全体の42%、南部アフリカが45%を占めた一方、東アフリカ、中部アフリカ、西アフリカはそれぞれ4.8%、1.3%、6.7%であった。

2022年世界新車販売レポート。中国メーカーが世界的な増進。テスラはモデルランキングを上昇
(画像=▲メーカー別の新規ピュアEV販売台数(百万台)、『CAR and DRIVER』より引用)

2022年、ピュアEV(BEV)の台数は66%増の737万台となり、前年から290万台増えている。これは、2020年から2021年にかけて見られた240万台の増加を上回る数字である。2022年のBEVの世界シェアは2021年の5.5%から9.3%に急拡大した。地域別で2桁のシェアを獲得したのは、中国(15.6%)と欧州(12.2%)のみである。

2022年世界新車販売レポート。中国メーカーが世界的な増進。テスラはモデルランキングを上昇
(画像=▲Felipe Munoz氏「EVブームはまだまだ続きそうだ。先進国の政府は手厚いインセンティブを提供し続け、消費者の内燃機関(ICE)車からの乗り替えを促しており、自動車メーカーがより手頃なモデルを導入してきたことで平均価格は低下している」、『CAR and DRIVER』より引用)

ノルウェーは、世界規模でEV普及の基準を作り続けている。2022年に同国で販売された乗用車の71%がBEVだったが、最もマーケットシェアを拡大したのは香港で、2021年の24.4%から53.1%にまでなった。JATO Dynamics ChinaのエリアマネージャーであるBo Yuは「6年以上経過した車両のスクラッププログラムと、一定価格までの新車電気自動車に対する免税措置は、多くの消費者にガソリン車から電気自動車への切り替えを促している」と述べている。

中国はBEVの世界最大の市場として、世界のBEV販売の53%を占めており、同国の世界市場での乗用車販売シェアである32%を大きく上回った。中国の成功は、BEVの納車待ち期間がICE車よりも短いことと、消費者にとって選択肢が増え続けていることの結果であり、2022年には中国で15もの新ブランドが立ち上げられた。2022年には、テスラが43%の販売増で首位だったが、中国のメーカーにマーケットシェアを奪われ、3%ポイント減の17.6%となった。