日産自動車の経営を立て直し、世界のトップ企業と肩を並べる企業グループへと成長させたカルロス・ゴーン氏。しかし2018年11月、金融商品取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、日産での地位を失い、その後映画さながらの逃亡劇を演じ日本を脱出するはめに陥ってしまった。

日産では一体、何が起こっていたのか。日産内部で行われていた「カルロス・ゴーン追放クーデターの舞台裏」について、元日産代表取締役のグレッグ・ケリー氏に真相を聞いた。

ゴーン氏逮捕の裏に隠された秘密

――カルロス・ゴーン氏とあなたは2018年11月19日、東京地検特捜部に金融商品取引法(有価証券虚偽記載)違反容疑で逮捕されました。その真相は、いったいどのようなことだったのでしょうか。

ケリー これは本来、刑事事件で扱うような問題ではなく、ルノーと日産の合併に反対する一部の人たちが合併を阻止するために企てた、ゴーン氏を追い出すクーデターだったのです。

――この事件には、日本政府や経済産業省などが関与していたと考えていますか。

ケリー クーデターのメンバーは、経済産業省をはじめとする日本政府関係者と、合併反対について何度かやりとりをしていたと理解しています。マイク・ヨシイ(レイサム&ワトキンス弁護士)氏がクリアリー・ゴットリーブ法律事務所に提出した報告書の中で、川口(均氏・日産の政府担当SVP<元副社長>)が合併阻止のために経済産業省に支援を求め、経済産業省は川口氏に検察庁に行くようアドバイスしたと述べている部分もあります。

――首謀者はハリ・ナダ氏(専務執行役員)だと、いくつかの報道機関で報じられていますが、ナダ氏についてはどう考えますか。

ケリー ハリ・ナダ氏はクーデターの主要メンバーの一人であり、クーデターを起こすために他のメンバーとともにとった行動は、日産のビジネス、株主、従業員に重大な損害を与えました。今回の問題は企業の問題であって、刑事事件ではないはずです。ところが私を逮捕させるために、私をだまして日本に誘い出したナダ氏の行動は、不当なものだったと思います。

2018年11月、ナダ氏は、私が首を固定するための緊急手術を必要としていることを知っていながら、私の病状を無視し、日米犯罪人引渡条約(死刑又は無期若しくは長期1年を超える拘禁刑に処するものが対象[k1] )を回避して私を陥れる計画を進めたのです。私が必要な手術のために米国に戻ることができなくなるとわかっていながらです。